大友啓史 おおとも・けいし/1966年、岩手県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、90年にNHK入局。97年から2年間、ハリウッドで学ぶ。11年NHK退局。代表作に「るろうに剣心」「プラチナデータ」など(撮影/写真部・岸本絢)
大友啓史 
おおとも・けいし/1966年、岩手県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、90年にNHK入局。97年から2年間、ハリウッドで学ぶ。11年NHK退局。代表作に「るろうに剣心」「プラチナデータ」など(撮影/写真部・岸本絢)

 もはやマンガ原作を抜きにして、映画は語れない。海外でも日本のマンガやアニメが映画化されるなか、「実写化は不可能」と言われていた清水玲子の『秘密』が映画化された。マンガと映画、それぞれ可能な表現も方法も違う。

 マンガの映画化を手掛ける大友啓史監督に、その極意を聞いた。

 人気マンガの実写映画化が増えている。「DEATH NOTE」「進撃の巨人」「海街diary」「青空エール」、これから公開される作品でも「ディアスポリス」「四月は君の嘘」、そして大友啓史監督の「ミュージアム」と引きもきらない。

 そんななかでも、清水玲子の『秘密』(第15回文化庁メディア芸術祭優秀賞)は、特に実写化が難しいと言われてきた。初の単行本が出た時には売り切れ店が続出、重版後も入手が難しかったため、謝罪文が連載誌に載ったという、人気作だ。

 物語は、連続猟奇殺人や迷宮入りの難事件がテーマなので、殺人現場の描写も頻出する。また、「死者の記憶を見る」という、映像的にもチャレンジングな要素もある。少女マンガとしては破格の内容の作品なのだ。

 NHK独立直後から、映画化の企画を進めていたという大友監督は、その困難さを語る。

「清水さんの描く物語は、構成が緻密で骨太。海外の連続ドラマのような密度と世界観があります。そのため、一度は連続ドラマのようなシリーズ物として考えていたくらいです。一方、マンガなら許される描写でも、実写にしたときにはどこまでOKなのかという問題がありました。清水さんの絵柄だから、残虐な場面でも読者が耐えられたところは大きい。また、マンガで許される表現が実写では成立しないこともある」

●表現方法の違いを超え

 原作をリスペクトしたうえで、映像化されたときのリアリティーは追求せざるをえない。安易に原作を実写化することは、映画の説得力を損なうこともあるからだ。だが同時に、そこに面白さがあるという。

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