最近の予報は昔に比べて難しくなっているのだという。

「以前は予測しやすかった、低気圧や台風などの動いてやってくる現象が、予想外の動きをしたり、勢力が変わったりして、予想しにくくなっています。また、大雨や強風なども予想を超えて最高記録が塗り替えられることが多いですね。これからは、天気予報で伝えられた内容よりも多少割り増しした現象が起こると覚悟しておいたほうがいいかもしれません」(森さん)

 実際に、気象庁に問い合わせてみたところ、「1時間50mm以上の非常に激しい雨や、80mm以上の猛烈な雨が降る日数は増加傾向にある一方、1mm以上の弱い雨が降る日数は減る傾向にある」とのこと。

 異常気象をもたらす原因はさまざまだ。偏西風の蛇行度合いの変化、エルニーニョやラニーニャの発生、ヒートアイランド現象など。いろいろな要素が複雑に絡み合っていることもある。

●予報の最新技術

 それでも、気象庁は予報の精度を上げるため、日々技術開発に努めている。スーパーコンピューターによる計算で今後の大気の状態を予測する「数値予報モデル」の改良が重ねられた結果、台風の先のほうの進路予測や降水予測の精度が上がりつつある。

 また、15年にはひまわり8号が本格的に観測を開始し、カラーで解像度の高い気象衛星画像が10分ごとに配信されるようになった。大気の状態をより正確に把握できるようになったため、台風の中心位置の予測精度も向上している。今年発生する台風の予報円は、昨年までのものに比べて半径が約20~40%程度小さくなる予定だ。

 天気予報が苦手とする局地的大雨をより高い精度で予報すべく、さまざまな研究機関で技術開発も行われている。たとえば、防災科学技術研究所では、「緊急豪雨速報」を開発中だ。これは、上空の雨粒の存在をXバンドMPレーダーという国土交通省の運用するレーダーでいちはやく検知し、地上で雨が降り出す前に、登録したユーザーに向けてメールで通知するというもの。現在では検知からメール配信まで数分程度かかるが、今後開発が進めば、現在よりも素早く行うことができるようになるはずだ。

 天気予報に親しめば、都会では遠ざかりがちな自然現象にも興味がわいてくる。ふと空を眺めて「今日はどうなるのかな?」と考えることが、命を守る行動にもつながるのだ。(ライター・気象予報士/今井明子)

AERA 2016年8月1日号