真の共働き社会の実現を阻むものとは…(※イメージ)
真の共働き社会の実現を阻むものとは…(※イメージ)

 共働き世帯は増えているが、妻は非正規雇用のケースが多い。真の共働き社会の実現を阻むものは何なのか。

 共働き世帯は1997年以降、片働き世帯を上回り、その差は開く一方だ。また女性の就業を見ると、結婚・出産時期に当たる年齢でいったん下降するいわゆる「M字カーブ」が特徴だが、その落ち込みは近年浅くなっていることがわかる。これは、結婚・出産を経ても働き続ける女性が増えている証拠だ。

 こんなにも共働き世帯が増えているのに、「真の意味での共働き社会に近づいているわけではない」と言うのは、立命館大学産業社会学部教授で、『仕事と家族~日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか~』の著者、筒井淳也さんだ。働く女性は増えているが、そのほとんどがパートタイム労働者だからだ。

 実は女性の雇用形態の割合の推移を見ると、2003年以降は非正規雇用が正規雇用を上回っていて、共働きといっても、妻は夫に扶養されているケースが多いのだ。

 定年まで正社員で働き続ける人と、出産・育児で仕事を中断し、非正規で再び働く人では、生涯賃金で2億円の差があると言われる。それでも、女性たちがパートや派遣などの働き方を選ばざるを得ない理由には、正社員で働くには多くの壁があることがある。

 男女雇用機会均等法(86年)や育児休業法(92年)、女性活躍推進法(16年)など、国も女性の就労をうながすような制度を整備してきたが、フルタイムで働く女性は、残業ありの過重労働に加えて家事や育児の負担も大きく、「二重労働」に苦しむ。たとえ扶養を外れて男性と同様に働いたとしても、昇進や昇級の差別があり、賃金も男性と比べて低い。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、短時間労働者を除いた「一般労働者」の賃金水準(13年)は、女性は男性の71.3%だった。

「男性と女性が対等な立場で働ける環境を実現するためには、長時間労働と転勤を前提とした男性的な働き方を抑制する必要があるのに、政府の両立支援は『女性を従来の男性的な働き方に近づけましょう、ただし出産・育児期は配慮します』というだけ。これでは本当の意味での『共働き』カップルは増えません」(筒井さん)

 税制・社会保障制度も、女性がフルタイムで働くことを抑制している。いわゆる「103万円の壁」「130万円の壁」だ。

 会社員の夫(妻)の配偶者の年収が103万円を超えると、夫(妻)の所得税の課税対象額から38万円を差し引く「配偶者控除」が受けられなくなる。また、配偶者の年収が130万円以上になると、社会保険の扶養対象や国民年金の第3号被保険者から外れ、社会保険料や国民年金保険料を支払わなければならなくなるのだ。(アエラ編集部)

AERA  2016年5月30日号より抜粋