こう問いかけるのは、『はじめての不倫学』(光文社新書)の著者で、社会的な切り口から性問題の解決に取り組んでいる「ホワイトハンズ」代表理事の坂爪真吾さん(34)だ。

 坂爪さんによれば、「環境条件的に現代は歴史上、最も不倫をしやすい社会」だという。

 携帯電話やSNSの普及で、個人間で常に連絡を取れるようになった。経済的に自立する女性が増え、男性が不倫相手の女性を経済的に援助するケースは減少。「普通の男性」でも不倫が可能になった。

 坂爪さんは、婚外交渉の経験などに関する複数の調査から、既婚者の中で実際に不倫をしている人を、「多く見積もっても、既婚者全体の1割程度の500万人」と推測する。この不倫人口が大幅に増加しているわけではないが、不倫への入り口とプロセスは可視化されやすくなった。だれもが、ふとしたことで、不倫の泥沼に足を踏み入れてしまう可能性があるという。

 坂爪さんは、不倫をインフルエンザのような「感染症」に例える。感染を100%阻止することは不可能。社会生活を営んでいれば、他者との交わりは避けられないからだ。ワクチンを打っても効かないことはある。インフルエンザに感染した人を「努力が足りない」「自己責任」とバッシングしても意味がない。

 同様に、不倫も「感染は防げない」という前提で捉えたほうがいいと坂爪さんはみる。重要なのは、「本能」という言葉に逃げこまず、感染経路を明確にし、感染確率を減らす予防策を立て、それでも感染した場合は重症化、周囲への被害拡大を最小限に食い止めるための対策を講じるべきだという。(ライター・羽根田真智/アエラ編集部)

AERA 2016年5月23日号より抜粋