さて、そんな需給モデルが機能しない現代、どんなビジネスモデルが有力なのか? 答えは明らかです。フェラーリでありエルメス、つまりは「希少価値」ということです。

 地方再生で欠けている視点もまさにこれ。私が関わってきた岩手県紫波(しわ)町の「オガールプロジェクト」では、宿泊施設などを備えた「オガールベース」の中に、日本初のバレーボール専用コートをつくりました。よくも今まで、こんなに「おいしい」市場をほったらかしにしていたもんだと、びっくりします。希少価値こそ、これからの地方再生のキーワードなのです。

 そのオガールベースもびっくりポンのホテルが、広島県尾道市にあります。その名も「ONOMICHI U2」。尾道から瀬戸内海を渡って愛媛県今治市に至る本州四国連絡橋「しまなみ海道」は、景色のいいサイクリングコースとして有名で、海外からも自転車好きが集まります。U2の客室は、「愛車」を持ち込んで壁に飾れるのです。

 価格帯は週末の1泊1人約1万5千円~2万円と、東京のホテル並み。そんなところに泊まる人が……いるんですよ。連日ほぼ満室で、海外でも大変な評判です。ツアー用の自転車は大変高価で、マニアックな持ち物です。そういう大切なものを部屋に飾りたいというニーズが、確実に存在するわけですね。しかも、そういうことをする人には金持ちが多いわけで、「金持ち相手の希少価値ビジネス」という究極のビジネスモデルを体現したといえます。(投資銀行家・山口正洋)

AERA  2016年4月18日号より抜粋