IREMONO代表取締役CEO邉裕明さん(27)本社オフィス兼住居は八ヶ岳のふもとにあり、標高1000メートルを超える。「静かなので集中できます」と邉さん(撮影/編集部・鎌田倫子)
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IREMONO代表取締役CEO
邉裕明
さん(27)
本社オフィス兼住居は八ヶ岳のふもとにあり、標高1000メートルを超える。「静かなので集中できます」と邉さん(撮影/編集部・鎌田倫子)
ログハウス風の外観はIT企業のオフィスだとはわからない(撮影/編集部・鎌田倫子)
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ログハウス風の外観はIT企業のオフィスだとはわからない(撮影/編集部・鎌田倫子)

 都会でさえも簡単とはいえない、起業。地方や馴染みのない移住先でとなると、さらにハードルが上がる――というのは、先入観かもしれない。地方には地方の、メリットがあるのだ。

 空き家や空き店舗を活用することで、起業のイニシャルコストを抑えられるというのもメリットのひとつ。一般社団法人移住・交流推進機構の森山忍さんは、「いまのトレンドは、シェアオフィスやシェアハウス。地域の課題の解決にもなるため、自治体の支援も手厚い」 と説明する。

 ネットメディアを複数運営するIREMONOは、そうした自治体のプロジェクトを活用した例だ。昨年4月に長野県富士見町のログハウスを本社として登記。家賃は1年目は無料、2、3年目は半額。

「その間に会社の基盤をつくろうと思っています」とCEOの邉裕明(ぴょんゆみょん)さん(27)は話す。大阪出身で京都の大学に進学し、卒業後は神奈川県のIT企業カヤックで2年間、エンジニアとして働いた。会社は友人と2人で立ち上げ、最近、新しく社員1人を雇った。

「IT企業のスタートアップといえば渋谷か六本木。でも、場所にとらわれるのはおかしいと思いませんか」

 邉さんは、ネットにつながる環境ならどこでも仕事はできると確信している。だから会社のコンセプトは「好きなヒトと、好きなバショで、好きなコトをして働く」だ。

 東京は人と情報が集まる場所だから、月に2回は上京して「インプット」に努める。一方で、田舎暮らしからも新しい視点を得て、「素敵な休日の過ごし方」をテーマにした女性向けの新しいサービス「Colors」を立ち上げた。移住して、コーヒーの淹れ方など生活を豊かにすることに関心を持つようになったからだ。

「都会暮らしだったら思いつかなかったアイデア。この環境だからこそできた」

(アエラ編集部)

AERA  2016年3月28日号より抜粋