パリ同時多発テロでもISの声明は具体性がなく、「犯行声明」とはいえない内容だった。それでもオランド仏大統領は「ISによる攻撃」として、ISへの報復空爆を始める理由とした。

 パリからブリュッセルへと続いた欧州の爆弾テロは、ISを攻撃する「テロとの戦い」を強化することで、蔓延や激化を抑えることができるだろうか。

 今回のブリュッセルのテロとロンドンのテロは、地元で調達できる材料で爆発物を手作りしていること、EU本部や政府施設、観光名所など、外国人にも分かる世界的に有名な場所ではなく、日常使う地下鉄を標的にしていることなど、共通点が多い。パリのテロで使われたのもTATPであり、サッカー場やロックコンサート会場という地元目線の身近な標的だった。

 そこから見えてくるのは、欧州のテロの主体は、欧州の移民政策のひずみから生まれた地元のイスラム過激派組織だということである。中東でISは脅威だが、欧州で続くテロは、ISを叩けば済むものではなく、より根が深いことを示している。(中東ジャーナリスト・川上泰徳)

AERA  2016年4月4日号より抜粋