「標準家族」という概念が形骸化している現代、パートナーを決める理由だって幅が広がって当然だ(撮影/写真部・東川哲也)
「標準家族」という概念が形骸化している現代、パートナーを決める理由だって幅が広がって当然だ(撮影/写真部・東川哲也)

 もし恋人に浮気がバレたら、どうなるだろうか。罵倒されるか、はたまた携帯電話を投げ捨てられるか。普通はそんな惨事だろうが、不思議なことにピンチが一転、人生の大転機になることもある。商社に勤務するコウキさん(34)がそうだった。

 コウキさんは、社会人になってから約4年間、ミキさん(30)と遠距離交際を続けていた。ある日、ミキさんが久しぶりにコウキさんの部屋に遊びに来た。コウキさんが仕事から帰ると、ミキさんはいつもと違う暗い表情。理由を聞くと、ポツリとこう漏らした。

「彼女、いるんでしょ……」

 実はコウキさん、このころ「三股」状態だった。丁寧な服のたたみ方、アイロンのかけ方、食器の片づけ方、小物の置き場所……ミキさんは、いくつもの異変を感じた。それぞれ三つのパターンがあることから、「自分の他に彼女が2人いる」と感づいたのだという。

「たまにオフクロが片づけに来てくれるから。誤解だよ」

 コウキさんはその場で、こう返すのが精いっぱいだった。ミキさんの指摘どおり、他に2人の女性が部屋に来たことは事実だったからだ。

 ここで修羅場に……とはしかし、ならなかった。ミキさんはそれ以上何も言わなかったからだ。それがプロポーズの「決め手」となった、とコウキさんは振り返る。

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