「完全に浮気はバレていたはず。それでも、僕にチャンスをくれた懐の広さに、女性として底知れぬ魅力と自分への愛情を感じたんです」

 ただし、「浮気に寛容」だから結婚したわけではない。商社マンとして世界中を飛び回る生活ゆえ、妻が日本で仕事を続ける限り、単身赴任は避けられない。現在もメキシコに駐在しており、結婚後も別居が続く環境で嫉妬ばかりされては、生活が成り立たない。お互いを尊重しあえるパートナーは、ミキさん以外にいないと思ったのだ。

「一緒に過ごせるのはわずかですが、結婚して5年、ずっとラブラブです。あの“事件”があったからだと思っています」

 IT企業営業職のリカさん(37)も、「二股」が結婚を後押しした。ソウタさん(29)と交際して半年、彼から突然別れを告げられた。

「実は、学生時代から10年間付き合っている彼女がいる」

 聞くと、相手は雑誌にも載っているグラビアアイドルだった。激怒して関係を絶つこともできたが、リカさんはあえて友達としての関係は継続した。

「競争相手がいるのは、価値が高い男なんだと思ってしまった。しかも芸能界の人でしょう。営業魂に火がつきました(笑)」

 リカさんは、自分の「価値」をソウタさんに再認識させることから始めた。ライバルは仕事柄、直前までスケジュールを決められないらしい。そこで、自分は予定を確定させて会う日を定例化する。遊ぶ時は、スノーボードや山奥の温泉探索などお互いの“初体験”を共有する。そうすることで、忙しくて時間が読めない芸能人とは、違う価値を提供できると考えたからだ。

「彼女と会えない日に私が空いていても、その日は会わない。一人で私と遊んだことを思い出せば、また会いたくなるはず。それに、彼女の“代わり”じゃないというアピールにもなる」

 そうした地道な努力の末、「破局」から約7カ月後にソウタさんは彼女と別れ、リカさんに再び交際を申し出てくれた。

「今までイヤな思いをさせたから、これからは大事にしたい」

 約1年後、正式にプロポーズを受けた。リカさんが振り返る。

「今思うと、彼女がいたからこそ彼は8歳も年上の私と付き合ったんだと思う。そう考えれば、二股は“入り口”であって、“出口”は自分次第でどうにでもできたんだ、とポジティブにとらえています」

(文中カタカナ名は仮名)

AERA 2016年2月8日号