──40代は「やらなきゃいけないこと」だらけです。

 そう、なまじ能力が増してくると、主語が他人になってるってことを忘れちゃうんだよね。でも、「自分の人生の主人公は自分だ」と気づくのが50代。

 僕は「ほぼ日」を始める時に、基本的にコピーライターとしての仕事はやめようと決めました。頼まれ仕事は、基本的にやらない。どうしても自分がやりたい時にしかやらない、とね。

──「やらなきゃいけないこと」より「やりたいこと」に目を向けると?

「お座敷がたくさんかかる芸者さん」が、ある年齢に達して、声がかからなくなった時、自分はもうダメだと思うかもしれないけれど、その芸者さんが、本当に踊りが好きで、お客さんに会いたいという気持ちがあれば、「自宅の横に踊りの稽古場を作ったんですけど、一緒にご飯でもいかがですか」というやり方だってあるはずでしょ?

 結局、スポンサーは自分なんです。自分なんて小さなスポンサーだけど、その小さなスポンサーに頼まれたことを一生懸命やっていれば、何か効果があったり、喜びがあったりするんだと思います。

 たまたま僕の場合は、49歳で運良くインターネットという「飛び道具」が見つかった。そして広告をやっていた時に身についた、考え方の順番といった基礎は応用ができる。つまり、自分が何かをやりたいと思った時に、最初に手助けしてくれるのは、やっぱり自分なんですよ。

AERA 2015年12月7日号より抜粋