アエラが昨年2回にわたって組んだ「40歳」特集で、糸井重里さんの発した「40歳は暗いトンネルに入ったみたいでつらかった」という言葉が話題になった。糸井さんはその40代を「ゼロになってもがいて」、50歳になる年に「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」を立ち上げた。そんな糸井さんがいま感じる、50代とは。
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──50歳で視界は開けましたか?
よくぞ聞いてくれました。そりゃあもう、トンネルはすっと抜けました。視野の先に何かが見えたとか、輝きの度合いが増したとか、はっきりした手応えはないけど、50歳で「行くぞ!」と思ってから、本当に明るくなりました。
「貧乏になってもいいし、友達がたくさんいる必要もない」と、かっこよく言えば覚悟ができた。それまでの延長線上で行く、というのが最悪だと思っていたので、そのままじゃないところに行くというのは、ものすごく気持ちが良かった。
──でも、多くの人にとって50歳から一歩踏み出すのは、ハードルが高い……。
いや、実は高くないんです。思い込みなんですよ。体力もそんなに落ちてない。50なんてピッチピチです。僕は今月67歳になったけど、65を超えるときついよ、すぐ眠くなっちゃうから(笑)。
50歳で新しいことを始めた最大の理由は、40代で「なんで俺は他人が主語の人生を送ってるんだろう」って気づいたからなんです。だいたい30 代というのは、他人からの些細な要求に対して応えられる自分に満足を覚える年頃。40代ではそれが全部できるつもりでいたら、通用しないエリアがものすごく広いことに気づいて真っ暗になって「トンネル」に入るわけですが、どちらも主語が他人なんです。他人の要求に応えて「やらなきゃいけないこと」だけをやってたら、人生終わっちゃうなと気づいた。