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エスキモーになった日本人 最後の猟に同行

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グリーンランドの大地と氷の海(※イメージ)(c)NASA

グリーンランドの大地と氷の海(※イメージ)(c)NASA

 大島さんは「エスキモーになった日本人」として日本のテレビ番組に何度もとりあげられた。でも今は、取材お断り。理由は「ああしてこうして、に付き合えない」から。おまけに意図しない「温暖化ストーリー」に都合良く収められた苦い経験もあったらしい。

 認可された専業猟師しか捕れなくなったシロクマ。広大な北西地域で年6頭まで、猟師1人が数年に1頭くらいだ。動物保護を求める国際社会の声に押された結果だが、加えて「温暖化でシロクマが絶滅の危機」という声も大きくなってきた。

 しかし、大島さんは疑問だ。野生の生息数を調べられるのは1年のうちでも一時期、地域も一部に限られる。

「それで、世界中どこも絶滅危機と騒ぐのは変だ」

 確かに温暖化で犬ぞり猟は厳しさを増している。海氷が張る期間が短くなり雪は減ったことで、犬ぞりで走り回れる期間もエリアも狭まった。だが、それ以上に響くのが社会の変化だ。

 犬ぞりで走り着いた海岸に住居跡があった。でも、もう誰もいない。「貨幣経済が来て自給自足の生活が壊れてしまった」と大島さん。電気や電話が来れば現金がいる。仕事を求めて町へ人は流れ、集落は消えた。

 シオラパルクでも、大島さん以外の猟師は観光客を犬ぞりで案内したり、オヒョウを釣ったりして稼いでいた。グリーンランド全体の猟師はこの10年で半減し、昨年は5831人。うち猟で生計をたてる専業猟師は2059人になった。

 伝統の防寒服や猟具を作れる人も減り、大島さんの元へはグリーンランド全土から犬ぞり用ムチや衣類を作ってと注文が絶えない。毛皮の処理を教えに遠方まで出向く。今や大島さんは北極の伝統の希少な継承者だ。

 北極の民は弱肉強食の輪の中で、自然と共生しながら生きてきた。「いい時代に生きた」という大島さんの言葉が突き刺さった。

AERA 2015年10月26日号より抜粋


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