「それを生きづらさとして抱えていたら、育まれた感性として生かすという発想に転換してほしい。経験や思いを若い世代に伝えることで、ともに支え合い多様性を認め合う社会をつくっていきたい」(持田さん)

 東京都文京区議で、知的障碍を持つ娘の親でもある海津敦子さんは、親の立場からこう話す。

「親自身が自分を犠牲にせず、好きなことをし、私には私の人生があるという姿勢を子どもたちに見せることが大事です」

 この子は私がいないと生きていけない、私が守るんだと親が抱え込んでしまうと、親の亡き後、きょうだいがすべてを引き受けなければ、と感じてしまう。そうならないために必要なのは、善意に頼るのではない、福祉システムの構築だという。

 親が元気なうちによく話をしてほしいと勧めるのは、あい権利擁護支援ネット理事の小嶋珠実さんだ。臨床心理士、社会福祉士として多くのきょうだいたちを見てきた。成年後見人制度の活用や、ホームソーシャルワーカーの必要性を説く。

「きょうだいが障碍者本人と一緒にいる時間は、親よりも長い。親代わりのような関わり方をするのではなく、社会資源を活用しながら、よき伴走者のような立場でいてほしい」

AERA  2015年8月17日号より抜粋