東京電力の勝俣恒久元会長(右)と、原発担当だった武黒一郎(左上)、武藤栄(左下)両元副社長。東京第五検察審査会の議決では、「勝俣元会長らは『万が一』にも備えておかなければならない高度な注意義務を負っていた」とされた (c)朝日新聞社 @@写禁
東京電力の勝俣恒久元会長(右)と、原発担当だった武黒一郎(左上)、武藤栄(左下)両元副社長。東京第五検察審査会の議決では、「勝俣元会長らは『万が一』にも備えておかなければならない高度な注意義務を負っていた」とされた (c)朝日新聞社 @@写禁

 福島第一原発事故を巡って告訴・告発された東電関係者に対し、東京地検が2度も下した「不起訴処分」の決定。科学的裏付けのない数字を根拠にしていた。

「想定を大きく超える津波だった」

 ブルーの作業着姿で記者会見した東京電力の清水正孝社長(当時)は、そう言い切った。福島第一原子力発電所で1号機が爆発した翌日の2011年3月13日、まだ調査が十分でない段階でのことだ。以来、東電はずっとそう主張し続けている。

 だがそれは、本当なのか。先月31日、東京第五検察審査会は、東電の勝俣恒久元会長と、原発を担当していた武藤栄、武黒一郎の両元副社長の3人を、業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴すべきだとする議決を公表した。大津波は東電社内で想定されており、事故を防ぐことはできたというのだ。東京地検が2度にわたって「犯罪の嫌疑は不十分である」と不起訴にした判断を覆した。

 福島第一原発事故は、10万人以上の人々を故郷から追いたてた世界史に残る「公害事件」だ。発生から4年以上も経過したいま、事故の責任が初めて刑事裁判で問われることになる。

 勝俣元会長らを告訴・告発していた福島原発告訴団の弁護士らは、「不起訴に終わったら、福島第一原発事故の真の原因が永久に闇に葬られたと思う」としたうえで、こう話した。

「事故のあと、東電をかばい立てする動きが政府にも検察にもあった。それを明らかにする刑事裁判になるんじゃないか」

「かばい立て」とは一体、どういうことなのか。

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