諫山創さん(右)と樋口真嗣監督。世代を超えたタッグにより、実写版「進撃ワールド」は完成した(撮影/松永卓也)
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諫山創さん(右)と樋口真嗣監督。世代を超えたタッグにより、実写版「進撃ワールド」は完成した(撮影/松永卓也)

 この夏、漫画「進撃の巨人」の実写映画が公開される。実写化にあたって、原作者である諫山創さんが樋口真嗣監督に要望したこととは。

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諫山創さん:実写映画化の話をいただいた時、「プロの方たちによる人食い巨人の話をつくるチャンスだ」と思いましたが、僕が映画で伝えてほしいというものは、なかったです。樋口監督の伝えたいことが見た人に伝わればいいな、と。

樋口真嗣さん:ただ、「原作の枠を取っ払ってほしい」という要望はいただきました。

諫山:はい。1稿目の脚本を見た時、結構、原作のシーンを取り入れている感じだったんです。しかし、それだと、監督不在の作品になるんじゃないかという気がして。だから、まず原作の縛りみたいなのを取っ払って考えてもらったほうが、よいものができるんじゃないかと思い、自分から「時代背景は現代がいいんじゃないですか」といった提案をさせていただきました。

樋口:そこで、「じゃあ『進撃の巨人』って何だろうか」という話を、もう一度、脚本を書いた渡辺雄介さん、町山智浩さんと一緒に考えたんです。その結果、「エレン」という主人公がいて、「壁」を越えて向こうに行きたいという願望が、いまの閉塞している現状とうまく対比させられるんじゃないか、と考えました。

諫山:僕が『進撃の巨人』で描いているのは、ファンタジーだと思っています。だけど、まったくの異世界の話でも、現代と通じる何か接点がないといけないと思っています。その意味では、完成した映画は、現代日本をベースにしてくれていると思いました。

樋口:また、諌山先生からは、「巨人で観客を怖がらせないでほしい」と言われました。結果的に怖がるのはいい。しかし、巨人に怖がらせる芝居はさせないでほしい、と。たとえば、目と目が合ったら、うわーっと驚くような、食べられる相手に意識を持っていかれるような感じにしてほしくない、と言われました。

諌山:巨人は、人を怖がらせるために生まれてきた存在じゃなくて、巨人は巨人として生きていて、たまたま人を食べるだけ。人を怖がらせるというのは、余計だと思ったんです。

樋口:で、改めて、原作の漫画を読み返していくと、あっ、それでこういう顔をしているのかと、わかったんです。たとえば、巨人のうつろな目です。そこで、そのあたりをもう一回、拾い出していくと、これはCGじゃダメだ、メインは生身の人間でいこうとなったんです。ただ、そうはいっても、巨人は「進撃の巨人」を象徴する存在。巨人として怖く見えるとか、慎重にテストを重ねていきました。

AERA  2015年8月3日号より抜粋