マーケティング支援を行うベーシックのマネージャー、川前志穂子さん(36)は、2004年に立ち上がった同社に「3人目の社員」として入社した。給与の支払いから収支計画作りなど、主に管理業務を通じて会社に貢献してきた。

 だが管理職になった途端、急に孤独を感じるようになった。実務はすべて把握しているから、経営陣やメンバーのサポートは完璧にできる。本人曰く「球拾いはうまかった」が、チームの戦略を考えることはできなかった。人事や経理など特定の専門性がないことも、自らの足を引っ張る原因だと考えた。

「目の前の実務に逃げ、一日が早く終わらないかと考えていた。あのとき、私は完全に迷子になっていました」

 役職が人を育てる、という考えもある。ただ女性たちの孤独は、役職がつき、これまでのキャラが通用しなくなることで生まれる。加えて、企業の女性活用に詳しい「Works」編集長の石原直子さんは、

「日本企業ならではの要因もある」

 と分析する。新卒一括採用を行う日本では、社員を「会計に詳しい人」などという「個」ではなく、「05年入社の社員」といった「年次」で管理する。日本ならではの採用・育成システムは、幅広い知識を身につけられるなどのメリットもあるが、それが女性管理職の孤独にもつながるという。

「人と比べて突出したキャリアを歩むことに慣れていない。女性管理職というマイノリティーだと、余計、不安が強くなるのです」(石原さん)

●男性は「お手並み拝見」

 事実、突出した女性への目は厳しい。大手メーカーに勤める女性部長(49)は一般職として入社し、総合職に転換。まじめな仕事ぶりが評価され、約10年前に管理職になった。当時、女性管理職は社に数人だけだった。

 管理職になり、男性との意識の違いも分かった。男性にとって管理職は「目指し」「勝ち取る」もの。だが、当時の女性にとっては「目指さず」「お膳立て」されるもの。ここに女性管理職が孤独になる理由がある、と言う。

「ポジションを奪われた男性は、管理職になった女性を『お手並み拝見』という目で見る。何をしたらいいの?と聞ける空気は全くなかった」

 女性たちは、孤独をどう乗り切ればいいのか。

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