冒頭の女性は、営業所のメンバーや取引先と、ひざ詰めで話す機会を設けた。トップダウンで決断するのではなく、目標を共有し、みんなでゴールを追う組織を目指した。全国最下位だった営業所の成績は、みるみる上がり、翌年トップになった。

「まだ十分な自信はないが、少しはたくましくなった」

 自らを「迷子」と表現していた川前さんは、自分の軸を見つけることができた。

「人の強みを見つけるのが得意だね」

 と社内で指摘されたからだ。いまは採用や社員面談などに力を入れる。経理など、誰かに任せられる仕事はすべて手放し、部下の適性を見抜いて適材適所に配するという、マネージャーとしての仕事に注力する。

●情報が伝わらない

 前出の水島さんは、孤独から脱出するためには「根本的なキャラ転換」が必要だと指摘する。

「上司をサポートするキャラでは、人を率いることはできない。組織のリーダーになると覚悟を決め、若手などを率いることができるアネゴキャラに転換することをオススメします」

 アネゴキャラを自任するのは、スパリゾートハワイアンズなどのリゾート施設を運営する常磐興産の取締役、渡辺淳子さん(58)だ。

 ポリシーは「自ら胸襟を開く」。もともと、周囲の男性社員がうんざりするほど、分からないことは聞きまくるキャラで、前職のみずほ銀行では30代前半と若くして管理職になった。だが、そんな渡辺さんでもこんなことがあった。

 ある日、融資先のお客から上司に電話が入った。渡辺さんは同じフロアにいたが、電話を切ったあとも内容は知らされない。数日後に上司に確認すると、渡辺さんの仕事にミスが見つかり、謝罪に行ったという。上司は、女性の渡辺さんに遠慮して言えなかったらしい。

「これが、女性を孤独にするもとなんです。女性がどんなにオープンなキャラだったとしても、男性は女性というだけで遠慮して、いいことも悪いことも言ってくれないことがある」(渡辺さん)

 このとき、渡辺さんは、上司にこう言った。

「遠慮されると、仕事にも影響があるし、私の成長にもつながらない。悪い情報も隠さず、伝えていただけませんか」

 今は、女性社員の意見を経営に反映させるなど社内で女性の活躍推進に力を入れる渡辺さん。この経験から約20年たつが、男性が女性にもつ「遠慮」は今も根強いと言う。

「男女問わず、全く同じ接し方ができる人はほとんどいない。女性側も心を開き、必要な発信をするべきです」

AERA 2015年8月3日号