従来型ソフトは「パターンマッチング型」といい、いわば「指名手配犯の顔」を集めた写真集のようなもの。ウイルスを顔で判断して検知する。だが、サイバー攻撃で急増中の「標的型」は顔が知られていない「初犯」や、その亜種がほとんどなので検知できないという。

 物騒な数字がある。警察庁によると、オンラインバンキングにおける不正アクセスの被害額は、2012年には5千万円に満たなかったが、13年は約14億円、昨年は約29億円に急増した。新種のウイルスが一日10万件のペースで生み出され、個人のパソコンを襲い始めているのだ。

 鵜飼社長によると、00年代前半まで、攻撃者は愉快犯が主で、対策は従来型ソフトで十分だった。ところが、いまは攻撃が経済的な動機に基づいていたり、国家間の情報戦だったりする時代になった。

「天才が薄暗い部屋からウイルスを送るイメージがありますが、いまは攻撃者やツールをつくる人が地下でつながり、経済活動が成立している」(鵜飼社長)

AERA 2015年6月15日号より抜粋