メキシコ料理店「アメンロ ラ フィエスタ」の精算カウンター。ビットコインを使えるが、決済する人はほとんどいない/東京・六本木(撮影/藤田知也) (c)朝日新聞社 @@写禁
メキシコ料理店「アメンロ ラ フィエスタ」の精算カウンター。ビットコインを使えるが、決済する人はほとんどいない/東京・六本木(撮影/藤田知也) (c)朝日新聞社 @@写禁

楽天、NTTドコモ、リクルート……。仮想通貨「ビットコイン」の将来に、先行投資する企業が増えている。時代は来るのか? それが最大の関心事だ。(朝日新聞経済部・藤田知也)

 老舗で味にも定評のある東京・六本木のメキシコ料理店「アメンロ ラ フィエスタ」。ここでビットコインを扱い始めたのは、昨秋のこと。店を訪れたビットコイン事業者に勧められたのがきっかけだが、これまで実際にビットコインを使ったのは、その事業者と連れだけ。高部渉店長(41)は言う。

「月に1回くらい飲み会を入れてくれて、割り勘のうちの何人かにビットコインで払っていただいています。仕組みは簡単。店のiPadにソフトを入れ、金額を反映したQRコードをお客様のスマートフォンで読み取るだけ。手数料も安いので助かるんですが、はやるかどうかは、正直わかりません」

 ほかにも「導入を勧めた人以外、誰も使わなかった」という店は複数ある。テレビや新聞でよく紹介された近くのレストランバーも、「ソフトを更新してなくて、今はビットコインでは受け付けられない」(店員)。お金を払うには日本円で十分──これが今日のビットコインの現実のようだ。

●人気衰えず取引所次々

 お札や硬貨といった「現物」がないビットコインは、インターネットだけで流通する「仮想通貨」。「サトシ・ナカモト」を名乗る人物の論文をもとに、2009年ごろから運用が始まった。日本銀行のような「中央銀行」がないかわり、世界中のIT技術者が報酬(=ビットコイン)と引き換えにプログラムを監視するという仕組みによって、一定の規律を保っている。

 最大のメリットは、銀行やクレジットカードなどに比べて、お金の行き来にかかる手数料を安く抑えられること。利用はITテクノロジーの発信地、米シリコンバレーから、通貨が不安定な南ヨーロッパや、中国へと広がっていった。

 ただ、日本でビットコインを一躍有名にしたのは、世界最大規模の取引所だった「マウント・ゴックス」(東京・渋谷)が破綻したことだ。昨年2月、最大400億円超の価値があったビットコインを抱えたまま、全取引が突如中止された。同4月からは破産手続きに入り、警視庁が“消えたビットコイン”の行方を今も追っている。

 それでも人気は衰えなかった。むしろ、取引場所を失った顧客の受け皿となるべく小さな取引所が次々と生まれ、そこへ初めてビットコインを知った人たちも群がっているのだ。

 その一つ、昨年4月に売買を始めたベンチャー「ビットフライヤー」(東京・永田町)では、毎月1億円分前後のビットコインが売り買いされている。

 元外資系証券のトレーダーでビットフライヤー社長の加納裕三氏(39)が説明する。

「利用者は今年に入ってからも1.5倍以上に増えています。都心に暮らす20代から40代の男性が大半で、お金に少し余裕がある人が多いようです」

次のページ