ただ、彼らの多くは「使う」ためではなく、「儲ける」ためにビットコインを買っている。理由はその激しい値動きにある。

●1日千円以上の乱高下

 1ビットコイン=1ドル以下から始まった相場は、キプロスの金融危機や、中国で一時的に決済を認められたことなどが相まって、グングン上昇。13年後半には一時1千ドル前後まで急騰し、1年で100倍にもなった。マウント・ゴックスの破綻後は300~500ドルほどで推移しているものの、今も1日千円以上の乱高下は珍しくないため、売ったり買ったりを繰り返すデイトレーダーもいるという。

 日本では今のところ、こうした“マネーゲーム”にしか、ビットコインの需要はない。その最大の理由は、クレジットカードや電子マネーがあまねく普及していることだ。ビットコインの利便性を享受する消費者が、日本にはほとんどいない。

 数少ない例外は、国境を超えてお金を送金する人たち。たとえば、日本の中古家電を中国に運んで売りさばく中国人ブローカー(42)は、こう語る。

「ビットコインから円に両替する手数料は、どこも1%未満。現金を引き出すのにかかる手数料を差し引いても、銀行間の送金と比べて数%は安い。ウチは1カ月に数百万円の売り上げがある。それをビットコインで日本に送ってもらって換金。毎月5万円くらい浮かしてるよ」

 日本に留学する息子にビットコインで仕送りする、という中国人もいるというが、まだまだ普通の人には縁遠い。

 前出の加納氏は「なかなか説明してもピンときてくれる人は少ないが」と前置きしつつも、こう熱っぽく話す。

「ビットコインが広まると、いろんなビジネスチャンスが生まれるんです。たとえば、海外のITプログラマーに1万円の報酬を払うとします。従来の銀行なら手数料が数千円かかりますが、ビットコインなら数百円。最近はフィリピン人にオンラインで英会話を教えてもらうサービスもあるでしょ。ビットコインなら、その代金を数百円だけ送ることもできるようになる。ウェブカメラを使い、留守の自宅を何時間か遠隔で見張ってもらうとか。ほら、いろんなビジネスが浮かんでくるでしょ?」

●eコマース普及見据え

 実際、きっとビットコインの時代が訪れると踏んで、先行投資する企業は少なくない。

 ネット通販大手の楽天は昨年10月、ビットコインの決済システムを提供する米ベンチャー「ビットネット」に出資し、今春から米国向けのネット通販事業を皮切りに、ビットコインでの買い物を可能にする。NTTドコモも今年1月、ビットコインの取引所を運営する米ベンチャー「コインベース」に出資した。リクルートはビットフライヤーの第三者割当増資を引き受けている。

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