イスラム国が日本人2人を人質にとった事件で、イスラム国側は「72時間以内に2億ドル」から、死刑囚らの釈放という新たな要求を突き付けてきた。人質のひとり、フリージャーナリストの後藤健二さん(47)と交流のあったアエラ編集部員は、そのメールの中に気になる一言を見つけていた。

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 イスラム国の人質動画で、「72時間以内の身代金」を要求された後藤さんと筆者は、もう一人の人質、民間軍事会社経営の湯川遥菜さん(42)のイスラム国での拘束をきっかけに、取材で知り合った。何度かメールや電話でやりとりするなかで、気になる一言があった。

「助け出せるものなら、もう一度助けてみたいんですよ」

 後藤さんは、かつて自由シリア軍に捕まった湯川さんを交渉の末、釈放させたことがあった。それが縁で、後藤さんは、素人同然の湯川さんに危険地域での動き方をレクチャーするなど、2人は交流を深めた。

 動画を見ても、まさか後藤さん自らが湯川さん救出のためにイスラム国に向かうとは思わなかった。知っていたら止めただろう。いまのイスラム国は過去のアフガニスタン、イラクなどと比べても、危なすぎる。

 後藤さんからのメールは10月3日を最後に途絶えた。「気をつけてください」と返信したが、返事はこなかった。後藤さんはその後、現地ガイドを雇いイスラム国の支配地域に入り、間もなく拘束されたと見られる。

AERA 2015年2月2日号より抜粋