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イスラム国 残虐な処刑法と洗練されたメディア戦略

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 欧米を敵視してきたイスラム国が日本にも牙を剥いた。72時間以内に2億ドルを求めた「処刑通告」の真意はどこにあるのか。

 イスラム国にとっては、外国人の誘拐や身代金はビジネスであり、プロパガンダでもある。国連に提出された報告書によれば、昨年のイスラム国の誘拐による収入は50億円前後に達していた可能性があるという。

 処刑された外国人は、昨年6月以来、米国人と英国人をあわせて5人に達する。動画で公開された人は全員が殺された。解放されたフランス人やスペイン人らは「処刑ビデオ」には出ていない。米国人などの場合、「オバマ、空爆をやめろ」という政治的要求だけで、身代金を求めた今回は初めてのケースだ。

 イスラム国で拘束された人々は「敵国の捕虜」として位置づけられている可能性が高い。イスラム法体系で捕虜の扱いは「解放」「捕虜交換で解放」「奴隷にする」「金で解放」「殺害」などに分類され、当局者はいずれかの方法を選ぶ。もし「スパイ」容疑が加われば、殺害にも十分な理由があると見なされる。

 公開処刑はイスラム法でも認められている。しかし、首にナイフを突き立てるイスラム国の殺害方法は、羊などの家畜を解体するときのやり方とほぼ同じで、きわめて異質だ。アラビア語では家畜の首を切り落とすことは「ザバハ」というが、イスラム国では処刑する者たちは、「サッバーブ(家畜解体係)」と呼ばれている。

 こうした残虐性とは対照的に、メディア戦略は洗練されている。人質にオレンジ色の囚人服を着せるのも演出だ。キューバのグアンタナモ基地や、イラクの刑務所で、イスラム教徒が虐待されたと信じており、その恨みを晴らすシンボルとなっている。イスラム国には広報組織「アル・ハヤート」があり、高画質の動画を絶えず発信するほか、カリフ国家の設立を宣言した後の昨年7月には機関誌「ダービク」も創刊した。

 ただ、イスラム国と日本とのかかわりはほとんどなかった。それが突然、巨額の身代金を要求してきた理由について、日本エネルギー経済研究所研究理事を務める保坂修司氏は「イスラム国の焦りがある」と指摘する。

「原油安で原油密輸の収入が減少し、米英など有志連合の空爆で戦線は膠着しています。シリアへの入国の監視も厳しくなり戦闘員のリクルートも苦しくなっている。ここで、日本人を使ってプレゼンス(存在感)を示し、あわよくば身代金として資金も獲得しようと考え、手元に置いていた後藤さんと湯川さんというカードを切ることにしたのではないでしょうか」

AERA 2015年2月2日号より抜粋


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