「プロパガンダ」主催のさつきさんは「女装をカルチャーとして世界に発信したい」と話す(撮影/会田法行)
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「プロパガンダ」主催のさつきさんは「女装をカルチャーとして世界に発信したい」と話す(撮影/会田法行)

 新語・流行語大賞2014のノミネートに「女装子(じょそこ)」が入った。惜しくも大賞からは漏れてしまったが、そもそもこの言葉自体は昭和から存在している。むしろ最近ではマンガやアニメなどの2次元から派生した「男の娘(こ)」という単語のほうがはやりといえるかもしれない。ただ、いずれにせよ近年、男性による女装が急激にカジュアル化しているという認識が背景にはある。

 東京・新宿のキリストンカフェ東京で月イチで行われる日本最大規模の女装パーティー「プロパガンダ」は毎回400~450人ほどの入場者を集めるが、「今年に入って変化がある」と主宰者のさつきさんは言う。

「7月に会場が移転したこともあるんですが、これまでは女装さん7割、女装さん好きの男性2割、いわゆる普通の女性が1割だったんですが、女性の割合が増えているんですよね。はやっているから行ってみようっていう人がけっこういるみたいで」

 フロアでは写真ブースやニコニコ生放送の配信などカルチャーとしての楽しさも。ゴス系でかわいく女装した学生のエルカさんは、この日初めてプロパガンダに来たという。

「女性服に憧れがあって、自宅の部屋でこっそり着ていたんですけど、インターネットでプロパを知って、思い切って参加してみました」。感想は、「もうドキドキしてたまらないです」。すでに女装の友達までできたという。

 ちなみにプロパガンダにかぎらず、女装パーティーで最低限守るべきルールが一つある。それは「女性の格好をしていれば、女性として扱う」ということ。もちろん女装のクオリティーや美しさを磨く人は多いが、会場全体の空気として、美意識は問われない。むしろ、そこかしこで「かわいい~!」と褒め合う光景を見ることができる。

 マッチョな社会で厳しい目線にさらされたり、窮屈さを感じている男性にとって、緩く褒め合える女装カルチャーは案外貴重な空間なのかもしれない。

AERA 2014年12月8日号より抜粋