衆議院解散を受け、企業が派遣社員を受け入れる期限を撤廃する労働者派遣法改正案が臨時国会で廃案となった。

 現在の派遣法は企業が同じ職場で派遣労働者を使える期間について、通訳や秘書など「専門26業務」を除き、最長3年と上限規制を定めている。

 改正法案が成立していれば、「専門26業務」を廃止し、人を3年ごとに代えることで、すべての業務で企業が期間の制限なく派遣労働者を使えるようになっていた。企業は低賃金の派遣労働者をより雇いやすくなり、専門職でも派遣は3年で職場を代わることを迫られる。

 つまり、一生派遣社員として働き続けざるを得ない「生涯ハケン」が増加するとして、野党や労働組合などから反対が出ていた。

「本来正社員に任せるべき仕事で派遣労働者への置き換えが進み、派遣という不安定な働き方が急増していくのは間違いない」

 派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は言う。

 安倍内閣は成長戦略の一環として、労働市場の流動化や働く形態の多様化を進める。派遣法改正もそのためで、今回は廃案となったが、衆院選後の来年の通常国会で再提出されると見られている。

 厚生労働省は、改正の目的について、派遣社員の働く機会を増やすことで、「キャリアアップを進め安定した雇用へつなげる」と説明する。

 しかし、ハケンという働き方の現状を前出の関根さんはこう説明する。

「派遣をはじめ非正規の世界では、年齢差別は当たり前のように起きている。40歳を過ぎると仕事は極端に減り、50代になるとまったくといっていいほど紹介されない」

 ユニオンには、「時給を下げても派遣先が見つからない」など、40代以上の派遣社員から相談が多く寄せられるという。

AERA 2014年12月8日号より抜粋