森ビルの手帳。2015年は6色展開(撮影/今村拓馬)
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森ビルの手帳。2015年は6色展開(撮影/今村拓馬)
ピジョンハーツの手帳。赤はピジョンのコーポレートカラー(撮影/今村拓馬)
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ピジョンハーツの手帳。赤はピジョンのコーポレートカラー(撮影/今村拓馬)

 社員や取引先でなければなかなか目にすることのない非売品の社員手帳。業界ならではの情報も充実している。最近の社員手帳事情は。

 社内イントラネットと会社支給のスマホがあれば十分、と経費削減の標的となり消えてしまった社員手帳がある一方で、進化を続けている社員手帳もある。約3千社の法人向け手帳の制作を請け負うNOLTYプランナーズの担当者によれば、法人向けの販売数はここ5、6年、ほぼ横ばいだという。

「ノートパソコンやスマホにデータが入っていても、客先で開くのに数秒の待ち時間ができてしまって、変な空気が流れたりする。商談時に必要な情報がすぐに出せるのはやはり手帳、という声は多いです。東日本大震災後は災害時行動マニュアルを掲載する企業も増えました」

 これが社員手帳?と驚かせるのは森ビルだ。フランスのクオバディス社製。6色展開で、好きな色を選べる。赤、青、黒の定番のほか、昨年から新たに3色追加。今年はピンクが、特に女性社員に人気だった。

 中に挟み込む別冊も凝っている。森ビルの物件が一覧できる地図や、写真つきの主要プロジェクト紹介、「世界の都市総合力ランキング」などのデータが充実している。広報室で、社員の声を反映しながら、内容を毎年改訂しているという。さらに、大安、仏滅などの六曜もきちんと網羅されているのはやはりディベロッパーならではか。

 育児・介護用品大手のピジョンのグループ会社で、保育事業を行うピジョンハーツは、社員の多くが保育士などの専門職。全国各地に施設が点在し、会社とのつながりを認識しづらい環境にあるなかで、会社への帰属意識を高めるためのツールとして、2007年から社員手帳を導入した。幼児教室や保育園の運営は年度単位のため、手帳も1月始まりでなく4月始まりを採用する。

AERA 2014年12月15日号より抜粋