自然災害が頻発している。いや応なしに高まる防災意識。人間関係の希薄な都会でも、「住民連帯」の機運が高まっている。

 11月22日の午後10時、大きな揺れが長野県北部を襲った。被害の大きかった白馬村堀之内地区では、23戸が全壊。乳幼児を含む1家5人が生き埋めになる家もあったが、最終的に倒壊家屋から9人が救出され、一人の死者も出さなかった。堀之内地区の区長、鎌倉宏さん(61)は、その理由をこう話す。

「ふだんの付き合いがあったからでしょうか。みんなで協力しあい、早めの発見や救助ができました」

 地区住民の8割にあたる76世帯220人が自治会に加入。区長をトップにした連絡体制ができている。どの家に何歳ぐらいの人が住んでいるのか、ひと目で分かるマップもある。そんな助け合いの仕組みをメディアはこぞって報じたが、それを見た東京都内のマンションの自治会長を務める男性(67)は、ため息をつく。

「見習いたいですが、なんせ都会のマンションですから……」

 東日本大震災後に急遽、安否確認や救助の組織をつくったが、いまも防災訓練を実施できていない。

 都会の人間関係の希薄さが、防災への備えを難しくしている。ただ、なかには成功しているケースも出てきている。

 東京都江東区にある52階建てタワーマンション「プラウドタワー東雲(しののめ)キャナルコート」の管理組合理事長、副島規正さん(50)は、感じている。

「意外と、やればできる」

 今年5月下旬、マンションで初めての防災訓練を実施すると、入居600世帯の過半数が参加した。これは1年間かけて50回以上の住民交流イベントを行い、「顔の見える関係」を築いてきたからだ。

「コミュニティー力は防災力につながると実感しています」(副島さん)

 東京都世田谷区の若林町会は、今年から地域の「防災空白地帯」をなくそうと、マンションの支援を始めた。町会役員のなかには、毎年夏の防災訓練の案内を、担当する全2400戸に3日かけて配布する人もいるなど、「地域力」のアップに力を入れている。

AERA 2014年12月8日号より抜粋