iPadで撮影した4回転ジャンプの映像を見ながら話し合うコーチのブライアン・オーサー(左)と羽生結弦。成功した映像から、助走や空中姿勢などを分析するという(撮影/ライター・野口美恵)
iPadで撮影した4回転ジャンプの映像を見ながら話し合うコーチのブライアン・オーサー(左)と羽生結弦。成功した映像から、助走や空中姿勢などを分析するという(撮影/ライター・野口美恵)

 グランプリシリーズ中国杯では、直前に他の選手との衝突という事故に見舞われながら、演じ切り、2位に入賞を果たした羽生結弦。より難易度の高いプログラムに挑むため、今季は練習法も見直したという。

 今季の目玉は、より難しい構成で挑む4回転ジャンプだ。

 ショートは昨季の「冒頭で1本」から「後半で1本」に。フリーでは昨季の「冒頭から続けて計2本」に加えて、「後半にもう1本跳んで計3本」に。プログラム後半は基礎点が1.1倍になるので、これは世界最高難度の挑戦となる。

「プログラム後半で4回転ジャンプを跳ぶには、かなり神経を研ぎ澄ましていないといけない。身体の疲労感も違うし、スピンの後だとちょっと目が回っているので、ジャンプを跳ぶ時に注意する部分も違う。身体の状況を感じ取ることが重要だ」

 トリプルアクセル2本も後半に跳ぶ。

「この構成ができる選手はなかなかいないはず。僕にとっても挑戦だ。体力作りがキーになる」

 そのために、練習方法も見直した。これまではプログラムを1分ごとに区切る「パート練習」中心だったが、昨季からは4分半を通して滑る「ランスルー」を取り入れている。この夏は、このランスルーを週7、8回に増やした。

 ランスルーを全力でこなすとその場に倒れ込むくらい疲労するが、試合さながらの気迫で毎日滑り込み、体力の限界を引き上げていった。

 4回転ルッツや、まだ成功者のいない4回転ループなどにも取り組んだ。試合に入れる予定もないのに、なぜ。

「今までは、ジャンプを自分の限界までプログラムに詰め込んで、無理にでも全部やろうとしていました。五輪王者となった今季は、そういう段階ではない。まずはミスのないパーフェクトな演技をすることが課題。そのためには自分の技術的限界をもっと引き上げないと。だから、新しい種類の4回転をやっているんです」

AERA 2014年11月10日号より抜粋