新制度では「保育の必要性」の認定を受けるため「支給認定申請書」を提出する。保育所の利用申し込み書と兼用の用紙で済む自治体も多い(撮影/写真部・加藤夏子)
新制度では「保育の必要性」の認定を受けるため「支給認定申請書」を提出する。保育所の利用申し込み書と兼用の用紙で済む自治体も多い(撮影/写真部・加藤夏子)

 入園が決まっても、1年後には退園しなければならないかもしれない。そのことに同意した人だけ、入園の申し込みを受け付けます──。

 今年4月の待機児童数が東京都内でワースト1の世田谷区。来年4月入園に向けて保育園選びがピークを迎える中、ある認可外保育所では冒頭のような説明がおこなわれている。

 いったん入園した保育園から追い出されるなんて、これまでは考えられなかった。原因は、来年4月に始まる「子ども・子育て支援新制度」だ。

 認可保育所のほか、認定こども園、小規模保育、家庭的保育も新制度の枠組みに入る。国から補助が受けられるため、いまは認可外の保育所が今後、認可や小規模保育に移行する動きがある。

 移行して変わることの一つが、入園申し込みの方法だ。認可外の場合は園と直接契約するため、先着順や面接、抽選など園が決めた方法で選考される。一方、新制度に入る施設はこれまでの認可と同様、自治体に入園申請し、働き方や家庭状況によって「指数」の高い人から希望する園に振り分けられる。冒頭の認可外保育所は2016年度に認可に移行予定のため、園が選考できなくなるのだ。

 もちろん、こうした事態は想定されており、すでに通っている園児が締め出されないように自治体が特例措置をとることが多い。しかし、冒頭の園は移行すれば定員が半減してしまうという。世田谷区では国や都の認可基準に上乗せして、0歳児の保育面積を広めにとっているため、認可外から認可に移行すると定員が減るのだ。面積が広いことは保育の「質」のためには重要だが、「量」を受け入れられないというジレンマがある。

 この園への申し込みを迷っているという世田谷区在住の会社員女性(31)は、9カ月の子どもを別の区の認可外に預けてすでに復職している。

「4月からは区内の園に移りたいのに、転園を覚悟しなければ申し込めないなんて。何度も園を移ると子どもがストレスを抱えてしまうのでは」

AERA 2014年11月10日号より抜粋