未払い状態にあった女性に届いた派遣会社の社長からのメール。こうしたメールが何通も届いたが、何の説明もなく、給料が振り込まれることはなかった(写真:本人提供)
未払い状態にあった女性に届いた派遣会社の社長からのメール。こうしたメールが何通も届いたが、何の説明もなく、給料が振り込まれることはなかった(写真:本人提供)

 安値で次々と落札した揚げ句に、資金繰りに行き詰まった。元CAが立ち上げた人材派遣会社が全国の公共機関でトラブルを起こした。

「早急に払います」「少しお待ちください」「また連絡します」

 そんなメールや電話の返事を何十回聞いただろうか。名古屋市美術館で働く女性(39)が、今年3月分の給与が口座に入っていないと気づいたのは4月末。美術館から業務委託を受けた派遣元の会社は言を左右にして逃げ回っているように感じた。

 心を奮い立たせて裁判を起こし、8月に強制執行でやっと給与を手にした。だが、美術館の同じ派遣の同僚は13人が未払いのままになっている。

 中央官庁や地方自治体などから、国際・海外関係業務を中心に幅広く委託事務を引き受けていた名古屋市の人材派遣会社が、大量のスタッフに未払いを起こし、一部では行政事務に影響が出かねない事態となっている。

 ウェブ上では「被害者の会」的な意見交換の場もできているが、当事者が全国に散在して職場も違うので集団的な対応も難しく、泣き寝入りを強いられる人が多いようだ。

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