ラインの滝。船で川の中にある観覧台に渡ることもできる。間近に滝をながめられる(撮影/写真部・馬場岳人)
ラインの滝。船で川の中にある観覧台に渡ることもできる。間近に滝をながめられる(撮影/写真部・馬場岳人)
チューリヒ湖畔。夕暮れから夜にかけ、大勢の市民が湖のほとりでリラックス(撮影/写真部・馬場岳人)
チューリヒ湖畔。夕暮れから夜にかけ、大勢の市民が湖のほとりでリラックス(撮影/写真部・馬場岳人)

 スイス最大の都市で玄関口のチューリヒ。空港で乗り換えて通過するだけではもったいない。わずかな滞在時間でも楽しめる場所がたくさんある。

 崖に設置された階段を下りる。ゴーッという音が迫る。階段を下りきると小さな洞窟がある。暗闇を通過し、明るくなると、滝の真横に出る。すさまじい勢いで落ちてくる水を仰ぎみる。顔に水しぶきがかかって気持ちがいい。幅150メートル、落差23メートル、毎秒70万リットル。水量が欧州一の「ラインの滝」だ。

 滝は、シュロスラウフェンアムラインファルという長い名前の駅から歩いてすぐの場所にある。チューリヒ空港駅から電車に乗り、ヴィンターツールで乗り換えた。空港から1時間もかからずに、こんな景観にめぐりあえる。チューリヒは世界の金融都市で、ビジネスで訪れる人も多い。空港と街中だけではもったいない。短時間でもその気になれば、スイスらしさを満喫できる。

 スイスといえば山。本格登山は無理でも、自然の中を歩いてみたい。整備された道が国中いたるところにあり、誰でもハイキングを楽しめる。ラインの滝のまわりにもハイキングコースがあり、あちこちに黄色の案内板が立っている。

 ◯◯まで何分と書いているが、信じると、次の予定に支障がでるかもしれない。古い案内板は、昔の健脚な人に合わせてできたので、軟弱になった現代人はその時間内に到着できないことが問題になっているらしい。案内板はスイスハイキング道会が作ったものだ。この会は、ボランティアに支えられ、道のメンテナンスに努める。

 チューリヒ郊外の手軽なハイキングコースとしておすすめは、ユートリベルクの丘。半日もあれば、チューリヒ中央駅から電車に乗って、ハイキングをして帰ってくることができる。871メートルの頂上には展望台があり、チューリヒ湖とリマト川に沿って発展した街が一望できる。天気がよければ遠くにアルプスものぞめる。展望台の隣には、広くて見晴らしのいいレストランがある。白いテーブルクロスがパリッとかかっている本格的なレストランだ。

 木漏れ日の中の細い道、なだらかな起伏の丘、のんびり草を食べる牛たち。草木の香りがすがすがしい。思い切り深呼吸する。

AERA 2014年9月29日号より抜粋