誰でも取りたい、でも言い出しづらいのが有給休暇。会社で休みを申請される側には、こんな思いもあるようだ。

「休暇はカワイく取ってほしい」と、上司の立場から言うのは、元リクルートの事業部長で、現在、コンサルティングや研修の実施などを行う「ACT3」代表の堂薗稚子さん(45)。

 休暇は労働者の権利。有給休暇を取る人間の査定を下げるという「お仕置き」はしたことはない。本来、上司は部下に「休暇を取りたいです」と言われたら、一も二もなく許可するしかない。

「ただ、上司も人間。もっていき方次第だと思うんです」

 堂薗さんはある時、部下の同僚から「彼女、ベトナムに行くんですってね」と言われ、驚いた。

「『ええっ、私、許可していないけど!』と……。独身の彼女が、安いオフシーズンに行きたいという気持ちは分かる。でも、だれだって安いオフシーズンに海外旅行をしたい。それをみんな我慢しているのに、平然とやられると、周囲はいい気持ちになりません。その上、また聞きっていうのは気分がよくない。同僚に言う前にまず私に言ってよ、と思いました」

 ワーキングマザーが陥りがちな落とし穴が、「子どものために」という休み方だ。ワーキングマザーは、子どもの感染症や授業参観、区役所の健診、歯科健診などで有給休暇を申請する場合が多い。自身、ワーキングマザーだった堂薗さんは、こう指摘する。

「区役所の健診や歯科健診などは保育園がやってくれるので、別に母親が行かなくてもいい。行くにしても、丸一日仕事ではない。ちょっとの用事で丸一日休まれると、『子どもをネタに、本当は1日休みたいだけでしょ』と周囲は受け取りがち」

 逆に、子どもの健診の後、午後から出社する同僚や部下には感心させられた。

「そういう人には、子どもがふいに熱を出して急に休まなくてはならなくなった時も、周囲がフォローするんです」

AERA 2014年6月30日号より抜粋