(撮影/写真部・岡田晃奈)
(撮影/写真部・岡田晃奈)

 格差社会と言われるようになって久しいが、見過ごしてはいけないのは各世代内での格差、特に高齢者間の貧富の差=「老老格差」だ。所得の格差を測る指標「ジニ係数」を見ると、60歳以上は他の年齢階級に比べて大きくなっている(厚生労働省「所得再分配調査」から)。

「近年は、正社員でも自営業者でもない人たちが高齢化し、年金をもらえず生活保護に走るケースが増えてきている」(『若者を殺すのは誰か?』の著書がある人事コンサルタントの城繁幸氏)

 老老格差が問題なのは、それを支える現役勤労世代の格差をも助長するためだ。総合研究開発機構の島澤諭主任研究員は、貧乏な高齢者を支えるための負担が貧乏な若い世代に背負わされ、高齢者から若者へのお金の移動が進まず格差が固定化するという構造ができていると指摘する。遠距離介護支援を続けているNPO法人「パオッコ」理事長の太田差恵子さんは、「親の年金が国民年金のみかどうか、家が持ち家かどうかによって子の負担感は大きく変わる」と語る。

 老老格差は経済的要因だけではなく、身体的要因でも拡大する。典型的なのが、親世代の介護による子世代の負担増だ。親の介護のために職を離れざるを得なくなる「介護離職」も深刻で、総務省の「就業構造基本調査」(2012年)によれば07年10月からの5年間で介護を理由とした離職者は48万7千人に上り、年々増加している。現在、国は介護に関して「施設より在宅」路線を打ち出しているが、「東京で仕事をしていた子どもが親の介護を機に仕事を辞めて地方に戻って親の年金で生活。その後、親が死んでしまい、地方なので仕事も見つからず生活保護に頼る──そんなケースが最近増えているそうです」(太田さん)

AERA 2014年3月10日号より抜粋