多くの人の心を鷲づかみにした曲が、別人の作品だった問題。渦中にある佐村河内(さむらごうち)守氏(50)の聴力に関しては、数年前から周囲では「聞こえているのでは」という声が上がっていた。

 クラシックでは異例のヒットとなった「交響曲第1番 HIROSHIMA」は、2008年に広島で初演された。「G8議長サミット記念コンサート~ヒロシマのメッセージを世界に~」で披露されたが、このときは第1楽章、第3楽章のみの演奏だった。全曲完全版が初めて披露されたのは、それから2年後の10年8月、京都でのことだった。

 演奏会当日には、前日まで入院していたという佐村河内氏も会場に足を運び、1600人の聴衆を集めたコンサートは成功裏に終わった。だが、その打ち上げの席上で思わぬ事態が起こる。実行委員の一人に佐村河内氏が険しい表情で迫り、こんな会話があったという。

「気づいた?(演奏を)カットしてたでしょ?」
「飛びましたね」
「ああ、やっぱり」

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