福澤克雄TBSテレビ1964年東京都出身、1989年入局▼子どもの頃好きだった番組時間ですよ/3年B組金八先生▼よく見る他局の番組 徳光和夫の週刊ジャイアンツ(CS日テレG+)ジャイアンツファンだけが楽しめる番組。ターゲットを絞る手法は「半沢直樹」のヒントにも▼入局以来、関わった番組3年B組金八先生/さとうきび畑の唄/砂の器/GOOD LUCK!!/華麗なる一族/南極大陸他▼好きな映画スター・ウォーズ▼好きな本下町ロケット<一番忙しい時期のタイムスケジュール>6:00 ロケ出発23:00 帰社後、編集作業や脚本のチェック27:00 ロケ出発。車中で仮眠31:00(翌7:00) ロケ開始(撮影/高井正彦)
福澤克雄
TBSテレビ
1964年東京都出身、1989年入局

▼子どもの頃好きだった番組
時間ですよ/3年B組金八先生
▼よく見る他局の番組
 徳光和夫の週刊ジャイアンツ(CS日テレG+)
ジャイアンツファンだけが楽しめる番組。ターゲットを絞る手法は「半沢直樹」のヒントにも
▼入局以来、関わった番組
3年B組金八先生/さとうきび畑の唄/砂の器/GOOD LUCK!!/華麗なる一族/南極大陸他
▼好きな映画
スター・ウォーズ
▼好きな本
下町ロケット

<一番忙しい時期のタイムスケジュール>
6:00 ロケ出発
23:00 帰社後、編集作業や脚本のチェック
27:00 ロケ出発。車中で仮眠
31:00(翌7:00) ロケ開始(撮影/高井正彦)

 この俳優を使えばヒットする――。そんな固定観念がテレビをダメにした。今どきの常識を打ち破り、人間の“本音”に迫ったとき、そのドラマは心を打つ。

 視聴率40%超えを果たしたドラマ「半沢直樹」。総合演出を担当したTBSテレビの福澤克雄(49)は、ラグビーで鍛えた身長190センチの巨漢だ。「ドラえもん」のジャイアンに例えられることも、しばしば。

「今の時代、どれだけ当たるセオリーをちりばめても、本当に当たるドラマなんて、ほとんどない。だからもう、今までの常識を打ち破り、ムリをやってもいいじゃないかと」

 池井戸潤の原作『オレたちバブル入行組』などに魅了され、ドラマの構想を練った。今どきのドラマは、まず俳優のスケジュールを押さえ、そこからストーリーを決めるのが一般的。だが、「半沢」は違う。「中野渡頭取」に北大路欣也、「大和田常務」には香川照之……。俳優の人気ありきではなく、あくまでも原作に忠実に配役していった。それはドラマ本来のつくり方への"原点回帰"でもある。

 「ストーリーを重視するというドラマづくりの基本に戻りたかった。見た目を豪華にしたいという制作者側の都合で、無理して俳優の顔だけそろえるのは、もうやめようよと」

 銀行を舞台にした堅いストーリーで、恋愛要素もない。しかも出演者の年齢層は高い。ヒットドラマの"お約束的"な要素は、ほとんどない。

「女性をターゲットにするのがヒットの近道といわれたドラマの世界で、女性受けしない要素が何拍子もそろっていた。ヒット作が次々生まれている時代ならば、間違いなく通らなかった企画でしょうね」

 企画に賛同してくれる人は多かった。ただし、そのほとんどが「ヒットはしないでしょうけど」と付け加えた。

 不安がなかったと言えばウソになる。思い出すのは、視聴率を取れなかったドラマの制作現場だ。毎朝8時45分、携帯電話に視聴率を知らせるメールが届く。ふるわない数字に目をやり、重い足取りで現場へ行くと、スタッフから役者まで「自分のせいだ」と落ち込んでいる。あの居たたまれない空気は、二度と味わいたくない。それでも、

「自分がおもしろいと思うものを精いっぱいつくりたい。神戸牛や大トロを使ってはいない。でも、最高の卵かけご飯を精いっぱいつくりますってね」

 福澤は、慶應義塾の創設者、福澤諭吉の玄孫にあたる。自らも幼稚舎から大学まで慶應で過ごした。子どもの頃に憧れた職業は映画監督。朝から晩まで映画館で「スター・ウォーズ」を繰り返し見ていたこともある。大学を卒業すると、いったんは富士フイルムに就職。しかし「夢をあきらめちゃいかん」と、TBSに転職した。

「日本には映画づくりを学べる場所がほとんどない。だから、テレビ局に入った。福澤家には映像に関わる人なんていないですから、やっていけるのかと、ずいぶん心配されました」

 連続ドラマは、映画より長い時間を使ってストーリーを展開できる。その醍醐味を今、つくづく感じている。(文中敬称略)

AERA 2014年1月13日号秋元康特別編集長号より抜粋