秋元康氏が指摘する「ウーロン茶世代」とは

2014/01/06 16:00

 ここ数年、そういうことをずっと考えていた。 だからこそ、そういう“引きこもり社会”からムリをしてでも飛び出した人は、生命力にあふれて魅力的に思えた。野茂英雄があのとき日本を飛び出して大リーグに行かなければ、その後のイチローや松井秀喜の活躍もなかっただろう。今号に登場する上原浩治さんもその中で、「ムリ」を超えて飛び出した。幼いころから鍛錬を積む歌舞伎の世界に40代後半で飛び込んだ市川中車さんも、日本にコンビニという文化を根付かせたセブン- イレブンの鈴木敏文会長も「ムリ」を超えた人たちだ。

 僕も8年前にAKB48を立ち上げたときは、「秋葉原でアイドルなんて絶対ムリだ」と言われた。だが、不思議と「ムリ」という言葉が面白く感じた。無理=誰もやっていないぞ、空いているぞと。

 僕もこれまでに何度も失敗した。大事なのは、間違えない力ではなく、戻ってくる力だ。最初から正しい道を行ける人はいない。間違えてもいいからやってみる。失敗したら、「イタタタ」と言って戻ってくればいい。失敗することで、使っていなかった筋肉が使われる。そのことに意味がある。失敗を恐れず、とにかくやってみる。その一歩目こそが大事なのだ。

 AKB48については、「時代を先読みしたんですね」などと言われる。そんなことはまったく予想できなかった。ヒットというものを相手にずっと仕事をしてきたが、視聴率20%も100万枚のCDの売り上げも自分では目に見えない。でも、小さな劇団にファンがついてチケットが買えない、どんどん上演する劇場が大きくなる…そんな目に見えるように大きくなっていく感じがいいなと思った。AKB48も最初はお客さんも入らず赤字だったが、何かが始まるというエネルギーと生命力にはあふれていた。

 もしあの時、専門家を呼んでマーケティングをして、その分析に従っていたら絶対にAKB48の成功はなかった。成功パターンを踏襲したって絶対に次の成功はない。「人の行く裏に道あり花の山」なのだ。

AERA 2014年1月13日号秋元康特別編集長号より抜粋

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清野由美著/戸澤裕司写真

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