原子力規制委員会は11月21日、東電が申請している柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働に向けた安全審査の初会合を開いた。各電力会社は「経営健全化」をタテに続々と再稼働申請をしている (c)朝日新聞社 (撮影/堀英治) @@写禁
原子力規制委員会は11月21日、東電が申請している柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働に向けた安全審査の初会合を開いた。各電力会社は「経営健全化」をタテに続々と再稼働申請をしている (c)朝日新聞社 (撮影/堀英治) @@写禁

 好調だったアベノミクスにかげりが見え始めている。専門家からは衝撃のリポートが発表された。

 内閣府が11月14日に発表した7~9月期の国内総生産(GDP)は、年率換算の実質成長率で1.9%増と、前期から伸びが半減。10月の貿易収支も1兆907億円の赤字となり、16カ月連続赤字という過去最長記録を更新した。産経新聞社とFNNの直近の合同世論調査では、実に81%が「景気回復を実感していない」と回答した。これが世の中の正直な“体感温度”だろう。

 そんな中、あるリポートがマーケットに衝撃を与えている。クレディ・スイス証券のチーフエコノミスト、白川浩道氏の「日本経済分析」だ。「急激な低下のリスクがある2015年の成長率」と題されたリポートには、こう書かれている。

〈補正予算の規模縮小、消費税引き上げを中心にした財政政策の緊縮転換を受けて、(中略)14年度以降の経済成長率には下押しの力が働き始め、(中略)財政政策の景気支援効果は15年度にはほぼ完全に消失する〉
〈13年4月の異次元緩和ショックの成長率寄与度は13年度の+0.8ポイントから14年は+0.5ポイントに鈍化する〉
〈15年度のGDP成長率は14年度対比で1.5ポイントも下押しされることになる〉

 要するに、アベノミクス「第一の矢」である異次元の金融緩和の効果は、消費増税などによって来年度には早くも鈍化し、再来年度には「ゼロ成長」になる──安倍政権が繰り出す金融政策も財政政策も、完全に行き詰まってしまうという分析だ。白川氏が言う。

「ここで試算したとおり、ジャブジャブの金融緩和といっても効果は短く、その年度内で消えてしまう。復興予算による公共事業も規模は縮小していて、効果はギリギリで14年度まで。さらに消費増税の影響は、実際は1年~1年半後に出てきますが、その15年度にはもはや弾切れで手詰まり状態。相当な不況になるかもしれません。株価は来年4月の消費増税直前がマックスで、その後、1万2千円ぐらいまで落ちるでしょうね」

 結局、散々もてはやされているが、安倍政権がやったことは「大胆な金融緩和」以外、バラマキ公共事業を中心とした旧来型の経済政策の焼き直しでしかない。賞味期限切れも時間の問題というのだ。

AERA 2013年12月2日号より抜粋