海外から多くの食品を輸入している日本だが、中には食品衛生法違反の事例も少なくない。

 年々輸入量が増えているタイで違反が多いのが、うるち精米だ。カビの発生や異臭、腐敗の事例が多く、12年11月からの1年間で9件の報告があった。

 なぜ、米にカビが発生するのか。AERAは、食品衛生法に違反した韓国産、タイ産を仕入れた輸入業者にアンケートをした。連絡先がわかった35社のうち、回答があったのは10社。タイ米からカビが発生した都内の輸入業者は、

「航海中の水漏れが原因。輸送中の天候や環境など、不可抗力による」

 と回答した。タイ米は「主食用」と「加工用」とに分かれ、加工用は酒や菓子類の原料になるという。こうした有害物質を摂取した場合、健康への被害はどうなのか。

「食の安全・安心財団」理事長で倉敷芸術科学大学(岡山県倉敷市)の唐木英明学長は、次のように説明する。

「ある有害物質を動物実験で長期間摂取しても害が生じない量の100分の1以下を一日摂取許容量(ADI)としています。ADIの8割を超えないよう基準値を決め、その数倍程度の有害物質を何回か食べても、健康被害はない」

 とはいえ、有害物質を含む多くの食料品が日本に輸入され、それを私たちが口にしていることは疑いようがない。『農薬毒性の事典』の共著者、河村宏さんは慎重だ。

「まず、基準値の数倍程度であれば安全というが、様々な農薬など有害物質が体にどのように複合的に作用するのか、加味されていない。また、ADIは動物実験を根拠に決められているが、発達途上の子どもの脳や神経に与える影響は今の実験ではわからない。食品以外の環境暴露も考えれば、摂取量はできるだけ少なくするに越したことはない」

AERA 2013年11月25日号より抜粋