「『するもしないも、あなたは自分本位。射精だけが目的ならこのまましないほうがまし』と言われて、ショックでした。たしかに、セックスの主導権は自分にあるという気持ちが、どこかにあった気がします」

 セックスは相手あってのもの。それを再認識した江崎さんは、かつての恋人同士のような新鮮味を感じ始めたという。

 大脳生理学者である大島清氏の著書『性欲』によると、男女の性欲に違いはなく、「他者との合一願望」が、その原型であるという。これは、人間はコミュニティーを形成しないと生きられない「集団型」の動物のためで、自分以外の人間とふれあうことで、本能的な「安心感」を得ようとする。

 つまり、生殖や快楽だけが目的ではなく、他者とのコミュニケーション願望の究極形が、セックスでもあるのだ。「相手をもっと知りたい」「喜びを共有したい」という精神的欲求にも重きを置くと、セックスの快楽はより強まっていくのではないだろうか。

AERA 2013年12月2日号より抜粋