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異例の事態? 五輪競技場入札、全業者が辞退した理由

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五輪会場の東京・晴海地区では、会場候補に近い築地市場の豊洲移転も控え、道路網の整備が急ピッチで進む(撮影/高井正彦)

五輪会場の東京・晴海地区では、会場候補に近い築地市場の豊洲移転も控え、道路網の整備が急ピッチで進む(撮影/高井正彦)

 都内のオフィスビル工事現場前で、現場監督が携帯電話に向かって怒鳴っていた。「おい、どこ走っているんだ!」

 作業員たちは手持ち無沙汰。しばらくすると70歳を超えたであろうドライバーが運転するダンプが慌てて走り込んできた。「いまの現場は年寄りと、経験の浅い若造ばかり。トラブルばかりで現場が回らない」と嘆いた。

 こんな状況が、最近はあちこちの現場で見られるようになった。背景には、建設現場で働く職人不足がある。「これからは職人技術者の奪い合いになる」とゼネコン関係者は見る。職人を確保するためには、待遇を良くせざるを得ず、その結果コスト増を招く。

 9月上旬、東京都は2020年の東京オリンピックで近代5種やバスケットボールの競技会場と想定される施設の入札を公告した。実は、これは2度目だ。7月に一度入札が実施されたが、参加した業者すべてが応札を辞退するという前代未聞の経緯をたどっている。

「武蔵野の森総合スポーツ施設(仮称)」の「メインアリーナ棟新築工事」と「サブアリーナ・プール棟新築工事」。都発注の久々の大型工事で、都がはじいた予定価格は、メインアリーナは96億9095万円。サブアリーナ・プール棟は70億9276万円だった。

 関係者によると、辞退した理由は「予定価格とJV(共同企業体)の積算価格との乖離が大きく、とても応札できない」「低過ぎる予定価格を見て断念するしかなかった」「人件費や資材が高騰し、受注しても赤字になる」。

 都は、悲願の五輪招致決定を受けて、9月に予定価格を引き上げたうえで再入札に踏み切った。予定価格はメインアリーナが8億1990万円増(8.5%増)の105億1085万円、サブアリーナ・プールは2億509万円増(2.9%増)の72億9785万円だ。最新の労務単価と資材価格で再積算したという。

 発注内容も見直した。外構工事や味の素スタジアムへの連絡橋の新設、歩道橋の移設などをとりやめ、天井材のグレードを下げるなど仕様も落とした。それでも、発注の価格は引き上げた。

 設備関係の建設業者OBは「仕事を割り振る談合とは違うが、全社が辞退したというのは、ある意味各社で示し合わせた可能性があるかもしれない。つまり入札不調が報道されて、労務費や資材高騰の実態を広く世間に知ってもらえる。そうすれば、『五輪予算の増額はやむなし』という都民のコンセンサスを得られると期待している」と推測する。

AERA 2013年10月7日号


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