手帳とカード電卓とボールペン1本で契約を取り、業界最大手のメーカーB社を牽引してきた男性(58)は今年、部長から「参与」という肩書に変わった。一握りの役員を除けば、50代後半の社員は早期退職するか、一線を退いて会社に残るかだ。男性は3人目の子どもがまだ高校生のため後者を選んだ。同期のうち居残り組が8割だ。

 今の仕事は、会社をPRするネット記事の責任者。各部署から集められた部下を束ねるが、指示の出し方は「部長にOKもらってきてね」。人事や予算を管理する権限はない。

「『参与さん』と呼ばれ、いわゆる窓際なわけですよ。下の世代からどう見られているか意識はするけど、考えても仕方がない。ネット事業は各部署から情報を引っ張ってこなければならず、僕みたいなオジサンが一人いると顔が利く。若い人にはできない役目なんです」

 一部上場の食品メーカーC社には50代の「ソフトランディング」すらなく、60歳まで雇用はガッチリ守られている。

「他社のようにリストラや追い出し部屋がないから、定年まで安心していられる」という副部長級の男性(56)の部下には、入社年次は上なのに課長級の50代男性もいる。

「40代半ばで出世競争が終わり、50代では格差が明らか。どうせなら若い部下が欲しいから、50代さえ50代をお荷物だと感じているかもしれません」

AERA 2013年9月23日号