「性」への心配の解消には、保育士と保護者の信頼関係が大切だ(撮影/小内慎司)
「性」への心配の解消には、保育士と保護者の信頼関係が大切だ(撮影/小内慎司)

 保育の現場に男性保育士は必要だ。それは誰もが認める。しかし、母親たちの思いは複雑だ。声を上げられない母親たちの実態もある。アエラでは以前、男性保育士の悩みに関する記事を掲載。周囲から「ロリコン」などと呼ばれたりと、様々な悩みを抱える男性保育士の実態を紹介したが、母親側にも悩みはあるようだ。

 4歳の長女を都内の民間の認証保育園に通わせる女性(36)は毎晩、一緒に風呂に入った時、娘に必ずこう聞く。

「今日はうんちした?」
「したよ」

 娘が答えると、

「誰に拭いてもらった?」
「○○先生だったよ」

 それが担任の男性保育士だとわかると、気が気でなくなる。

「変なことなかった? ○○先生、手を変なふうに動かしてなかった?」
「うん、しなかったよ」

 それでも心配でならない。

「もし、いつもと何か違うことがあったら、絶対ママに言うんだよ」

 女性がここまで心配するのは、男性保育士の娘への「性的ないたずら」だ。

「4歳はもう立派な『女』の感じがします。娘は、『性的な目』で見られる対象になると思っています」

 娘はこの保育園に、4月から通う。園にはスタッフが10人いて、うち男性保育士は2人。一人は20代後半で、もう一人が30代半ば。娘のクラスには担任が2人。一人は年配の女性で、もう一人が30代半ばの男性保育士だ。イケメンではないがベテランで優しい。ただ、独身で彼女もいそうにない――。担任の男性保育士が娘を性的対象として見るのではと思い、どうしても不安が拭い去れないのだと言う。

 娘はうんちをした後、まだ自分でお尻をきれいに拭くことができない。園では、トイレに入ると自分でカギをかけて用を足し、うんちの場合は先生を呼ぶことになっている。すると、担任か園長、そのいずれも近くにいない時は他のスタッフが来てくれる。トイレという「密室」では、何か起きても周囲にはわからない。そういう場所に、担任の男性保育士と娘が一緒にいることが心配でならないのだ。

「しかも、娘はどちらかというとおとなしい性格。何かされても何も言えないんじゃないかと思うんです」

 しかし一方でこうも話す。

「うるさい親と思われるのが非常に怖いです」

 女性は3月、それまで娘が通っていた民間の認可外保育園から、「紙オムツを使わない」といった園の方針に従わないとの理由で突然退園を通告されたという。今の保育園には個別に申し込み、ようやく入れてもらった事情がある。

「娘を人質にとられているようなもの。これ以上問題を起こしてモンスターペアレンツと思われ、園にいられなくなるのが本当に心配。今は担任の男性保育士と何もないことを願い、信頼関係を築こうと思っています」

AERA 2013年9月2日号