ここのところ注目を集めている、乳がんなどのリスクを調べる遺伝子検査。実際に検査のカウンセリングに立ち会い、その内容を聞いた。

 東京都在住の女性(40代)は、これまで病気らしい病気にかかったことはない。それでも、昭和大学病院(品川区)の「ブレストセンター」で週1回実施されている、遺伝性の乳がんについてのカウンセリングを受けることにした。遺伝子検査を受けたいと考えたからだ。

 予約していた外来を訪れたのは今年6月中旬。遺伝カウンセリングが行われるのは、対話しやすい4人がけのテーブルがある小部屋だ。そこで認定遺伝カウンセラーの四元淳子さん(47)と向き合った。

 まず尋ねられたのは、受診の背景だ。次いで既往歴。これまでの入院歴は虫垂炎ぐらいだが、この女性が気がかりだったのは母の病気のことだった。母は50代半ばに乳がんを発症し、手術と抗がん剤治療を受けた後、再発。60代前半で亡くなった。闘病の過程をつぶさに見てきたし、その後、母の姉である伯母も乳がんを発症した。

 今回、女性の同意を得た上で、カウンセリングに同席させてもらった。意外だったのは、全1時間半程度の30分強は、家系親族内の既往歴のヒアリングと家系図の作成に割かれたことだ。カルテには、本人を中心に、父方と母方双方の祖父母、両親、兄弟姉妹、子、おじやおば、従兄弟姉妹、従甥姪…と、どんどんツリー状に展開される家系図が書き込まれた。質問も細部にわたった。

 丁寧な聞き取りの結果、四元さんからは、「実際に乳がんに罹患したお母さんで遺伝子検査をすれば、変異が見つかる可能性は二十数%ほどですね。あなたの場合、理論上それより確率は低くなります。それでも一般より高めですが、変異が見つからない可能性のほうが高いとも言えます」と目安が示された。

AERA 2013年7月15日号