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東海村の放射能漏れ「専門家の常識」で通報に遅れ

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事故を起こしたJ-PARCの実験施設の内部。「想定外」の連鎖が、終わる日は来るのだろうか (c)朝日新聞社 

事故を起こしたJ-PARCの実験施設の内部。「想定外」の連鎖が、終わる日は来るのだろうか (c)朝日新聞社 

 県都の水戸市から北東約15キロにある茨城県東海村。5月23日、村内の六つの小学校は、翌々日の運動会に向けた練習をしているところだった。

 その最中の午前11時55分ごろ、日本原子力研究開発機構(原研)と高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)が運営する原子核素粒子実験施設「J-PARC」から、放射性物質が施設の外に漏れた。研究者ら34人が被曝し、最大被曝量は1.7ミリシーベルトとなった。

 陽子ビームを金にあて素粒子を発生させる実験中に、装置が誤作動し、陽子ビームが通常の400倍の出力で金にあたったことで「出ないはず」の放射性物質が漏れたのだ。

 研究者らは、建物内の放射線量が上昇したため線量を低下させようと、排気ファンを作動させ、外部へ放射性物質を漏出させた。事態の深刻さも認識せず、県、村には、24日の午後9時40分になってようやく通報した。事故発生から33時間以上がたっていた。

 小学生の子を持つ保護者や教育関係者は怒り心頭だ。

「知らせてくれれば、子どもにそのまま練習させるかどうかも含め、判断できたのに」(保護者)

 今回事故を起こしたのは原研ではなく、高エネ研の施設だ。幅広く原子力を扱う原研に比べ、高エネ研は事故を起こした加速器のみを扱う。J-PARC関係者は言う。

「原研に比べ高エネ研は放射性物質の漏洩などについて考えが甘く、文化が違うと言われている。なのに事故の通報は、原研の原子力科学研究所がすることになっている。今回、双方の意思疎通がうまくいっていないことが露呈した格好です」

 J-PARCでは、火災や放射性物質漏れなどが起きた際、ただちに自治体などに通報する取り決めである「安全協定」は原研とのみ結ばれている。原研と高エネ研の共同運営施設であるにもかかわらず、である。

 そもそも、原子力に関係する研究者や技術者は、事故や、それに伴う被曝を過小に見積もりがちだ。放射線安全管理学が専門の首都大学東京の福士政広教授は、そう指摘する。

「今回程度の被曝は、健康にまったく問題のないレベル。専門家であればあるほど、このレベルなら大丈夫と思ってしまう。外部に放射性物質を漏らしたことや、通報が遅れた背景には、専門家にしか通じない『常識』があるのでしょう。ただ、それが一般社会には通用しないことは、福島の事故で十分に学んだはずですが」

AERA 2013年6月10日号


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