4月22日、サッカーのイングランド・プレミアリーグで、香川真司(24)の所属するマンチェスター・ユナイテッドは2季ぶりの優勝を決めた。マンUの名将アレックス・ファーガソン監督が最も信頼を置く記者は、監督が香川獲得を熱望した理由をこんなふうに言っていた。

「欧州チャンピオンズリーグ(CL)で優勝するには、洗練されたスタイルに改革する必要がある」

 イングランドでは伝統的にボールを奪い取る能力の高い選手が好まれてきた。反則ギリギリの激しいタックルを浴びせて奪い、相手陣にドリブルで切り込むスタイルを観衆も好む。しかし、それは国内では通用しても、欧州では勝てなくなった。

 2011年のCL決勝が象徴的だった。マンUはバルセロナ(スペイン)に1-3で敗れた。スコア以上に「惨敗」だった。

「欧州のトップレベルでは、一度ボールを失うと容易に取り返せない。つまり、ボールを奪う能力よりも、仲間と連携してボールの支配率を高める選手が必要だと気づいた」(地元紙マンチェスター・イブニングニュースの元番記者デービッド・ミーク氏)

 今季のCLはベスト16で敗退。香川の長所をチームメートが理解する前に、欧州制覇への挑戦は終わった。ミーク氏は言う。

「日本人の美徳かもしれないが、当初は仲間に敬意を払いすぎる傾向があった。かつて在籍したポルトガル代表のクリスティアノ・ロナルドのように傲慢とも思えるプレーがあっていい。それだけの技巧があるのだから」

 一方、同郷の神戸出身の香川の才能をいち早く見抜いた、日本で最長老の現役サッカー記者、賀川浩さん(88)は、成長ぶりを感じている。

「ペナルティーエリアに入ったときに真司の良さが出る。シーズン終盤はチームメートも把握してきたんとちゃうかな。パスが出てくる頻度が増えた」

AERA 2013年5月20日号