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加齢黄斑変性の新治療 iPS細胞での研究も始まる

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 パソコン画面のエクセルの表がゆがんだり、東京タワーが曲がったりして見えませんか?
 放っておくと失明の危険もある眼病について、新しい治療方法の研究が進んでいる。
 
 50代の男性会社員が昭和大学病院附属東病院(東京都品川区)の眼科外来を訪れた。
 「見ようとする場所がゆがみ、左右の見え方が違ってきた」
 仕事中にパソコンでエクセルの表を作ると、まっすぐな罫線がゆがんで見えるという。方眼紙のような図を片目ずつ見つめる「アムスラー検査」をしたところ、格子がゆがんで見えた。
 眼底検査で網膜の状態を観察し、網膜の断層を計測器で調べたところ、網膜の外側から新しい血管が発生しており、「加齢黄斑変性」と診断された。

 ●栄養素不足や喫煙で
 網膜とは、カメラに例えればフィルムだ。外の光が瞳や水晶体を通って網膜に当たることで、光を感じる。黄斑はこの網膜の中心部にある直径約2ミリの部分。年をとるにつれてそこが障害を起こすと、視力が低下したり、ものがゆがんで見えたりする。これが「加齢黄斑変性」で50代以上の人の約1%にみられる。
 加齢のほかβカロテンやルテイン、オメガ3などの栄養素不足も考えられるが、大きな原因の一つは喫煙とみられている。喫煙によって体内に活性酸素が発生し、細胞に悪影響を及ぼす「酸化ストレス」の状態となるためで、男性に多いのも特徴。肥満や長時間日光を浴びることも原因と言われている。
 加齢黄斑変性には「萎縮型」と「滲出型」の二つのタイプがある。前者は、網膜の細胞部分が年齢とともに変形して老廃物がたまり、網膜の外側の部分が萎縮することで視力が低下する。加齢現象の一つであり、進行を止めるのは難しい。
 後者は、網膜の外側の脈絡膜と呼ばれるあたりから新たな血管が異常に発生し、血管が破れて出血するなど、網膜に障害が起きるのが特徴。治療しないと視力が低下するほか、ものがゆがんで見えたり視界の中心部が暗くなったりして、症状が急激に進む。放っておくと失明する危険もある。

 ●レーザーや注射で治療
 滲出型の症状に対して日本では2003年から、レーザーで新しい血管(新生血管)を退縮させる光線力学的療法(PDT)が行われている。最大3回程度まで、3カ月おきに実施すると、もとの視力が維持できる効果がある。治療の対象となるのは視力が0・5以下で網膜の中心部に新生血管がある人とされている。しかし、何度も繰り返すと目の奥に影響を与えかねないデメリットもある。
 また08年からは、新生血管をつくるたんぱく質(サイトカイン)をブロックする注射薬を、目薬タイプの麻酔をして白目部分から直接注射する方法も行われている。この療法を、光線力学的療法と併用する場合もある。いずれの治療も保険が利く。
 滲出型については、理化学研究所などの研究チームが、iPS細胞を用いた治療法の臨床研究を計画している。このタイプの場合、網膜細胞の一種である色素上皮細胞が、異常に発生した血管によって傷つけられているため、患者の皮膚から作ったiPS細胞を使って新たな色素上皮細胞を再現し、移植する。厚生労働省が承認すれば、まずは、重症患者への治療で安全を確認するという。
 加齢黄斑変性の治療を多く手がける昭和大学医学部講師の岩渕成祐医師は言う。
 「細胞ががん化する可能性がある問題が解決したわけではなく、きちんと治療できるめどが立つまで10年から15年程度かかるのではないか」
 比較的新しい治療法である光線力学的療法や注射療法を用いても、すべての人が完治するわけではない。

AERA 3月11日号


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