職場での問題として取り上げられる「セクハラ」。最近では社内だけでなく、社外でも注意しなければならないようだ。

 都内に勤める営業系の男性は、20代前半の女性部下数名を連れ、客にあたる取引先の男性数人と飲み会をした。数時間たったがまだ宴会は盛り上がっていたので、彼は女性部下たちにその場を任せて帰宅した。しかし、その後部下が取引先にセクハラ発言をされ、彼は上司としての責任を果たさなかったという理由で左遷されてしまったのだ。最近では「取引先からのセクハラ防止研修」も存在し、部下がセクハラにあう状況に追いやった場合も処分されることがある。もちろん自分が客の立場であっても、取引先の担当者にセクハラしていいはずがない。有利な立場にあると気が緩むものだが、取引先から苦情がきて処分を受ける人が多いのもまた事実だ。

 さまざまな事例に気をつけていても、万が一セクハラをしてしまった場合には、

「迅速かつ誠実に謝罪することが大事です。裁判になったり大事になる事件の大半は、開き直りや恫喝で状況を悪化させたケースなのです」(セクハラ問題に詳しい山田秀雄弁護士)

 それでは、「これはセクハラ?」と迷ったときの判断基準はあるのか。長年セクハラ問題に取り組んできた臨床心理士で、カウンセリングオフィス成子坂の代表、和田順子氏は言う。

「もし自分の妻や恋人や娘が職場で同じ言動をされていたら許せない、と思う言動はすべてNGです。また、職場に社長の娘がいたと仮定して、彼女にできないことは他の女性にもしてはいけないと心得ましょう」

 セクハラ問題は、実は職場の人間関係と密接にかかわり合っている。ハラスメント防止研修などを行うクオレ・シー・キューブの取締役、古谷紀子氏だによると、セクハラ相談をしにくる人の話をよく聞くと、職場のコミュニケーションが不足していたり、部下が不平等な扱いを受けていると感じていたりと、セクハラとは別の部分での鬱憤もたまっていた、という場合が多々ある。

「一回の言動だけでセクハラととらえられる例はむしろ少数派。普段の言動で部下などに『軽んじられている』と感じさせてしまう人ほど、セクハラ人間になってしまいやすい。普段から相手を一人の人間として尊重することこそ、一番のセクハラ対策です」(古谷氏)

AERA 2013年4月29日号