化学系の人気も上昇している。成長が期待されるバイオ分野との融合や、生活衣料などの新素材開発が注目されているという/京都大学の杉野目研究室(撮影/前田博史)
化学系の人気も上昇している。成長が期待されるバイオ分野との融合や、生活衣料などの新素材開発が注目されているという/京都大学の杉野目研究室(撮影/前田博史)

 産業構造や社会情勢を反映し、人気学科が大きく変化するのが理系大学の特徴だ。だがかつてのITブームは一段落し、電機不況に直面。情報系学科に昔日の勢いはない。まして電気・電子系学科の凋落は顕著だ。以前は、「工学部の人気トップ学科」として君臨していたが、メーカーにはリストラが吹き荒れ、大学入試の難易度も大幅に下がっている。

「良い学生が来なければ、ますます衰退する」

 多くの業界関係者が、そんな危機感を募らせている。

 工学博士で半導体コンサルタントの服部毅さん(66)は、こう嘆く。

「電気・電子系の不人気は当たり前。国内の電機や半導体メーカーは今やリストラ一色。明るい希望なんて持てない」

 服部さんが何より苛立たしいのは、これが日本に限った現象に見えることだ。韓国もアメリカも、電機業界は好況で、大学の関連学科の人気は今もトップクラスだという。

「ところが日本のメーカーは将来展望を開けない。大学も学科の名称変更などで学生を騙そうとするが、肝心の教育研究で世界に追いつけない」

 最近の人気トップは機械系だ。主な就職先としては自動車業界がある。トヨタ自動車などに代表される日本メーカーの強さが、学科人気にそのまま反映している。

 また、ここ数年で人気が急回復して注目されるのが土木系の学科だ。

「かつて土木は、公共事業の減少やゼネコン各社の業績悪化などから志望者が減った。大学側は2000年ごろから、あか抜けない印象の『土木』という名称を学科から消すなど、イメージアップに躍起になった」

 最近の人気復活には、東日本大震災の復興需要の影響もあるという。

 入学後に進学する学科を成績で決める「進学振り分け」の制度がある東京大学でも土木系の「社会基盤学」が人気である一方、電気・電子系は凋落が顕著だ

AERA 2013年4月1日号