近年、ギャンブルの依存症が増えているという。日常生活のささいなきっかけで始め、やめられなくなる人もいるようだ。

 東京・多摩地区に住む女性(41)の場合、最初は夫が出勤後の、義母と2人きりの気疲れする時間を避けたかっただけだった。

 気後れしたのは初めだけ。大音響を上げピカピカ光るパチンコ台から大量の玉が出てくる「大当たり」に興奮し、爽快感を覚えた。すぐに、夫に内緒でクレジットカードのキャッシングで月に30万~40万円を借りては一部を返しながら、パチンコ店に通う生活が始まった。

 結婚4年目の30歳で長男を身ごもったが、出産前日も車を運転してパチンコ店に行った。おなかの大きな女性は他にもいたので気にならなかった。「美容院に行く」「映画を観てくる」。出産後は嘘をついて実家に幼子を預け、パチンコ台の前に座った。長男が2歳のとき、誰もいない家に置いて行ったこともある。夫の給料日に会社まで行って給料袋を受け取り、パチンコ店に直行した。夫もパチンコ好きで、駐車場の車内の後部座席で息子を遊ばせて、夫婦交代で店に入って打ったこともあった。

 特定の刺激に対する欲求が抑制できなくなる「依存症」の新聞記事をたまたま読み、自分のことだと思った。相談した精神保健福祉センターから依存症リハビリ施設「立川マック」を紹介されて通うようになり、やっと衝動を抑えられるようになった。家族に打ち明け、夫の生命保険を解約するなどして借金約80万円を返済した。

 女性は言う。

「子どもに事故が起きなかったのは、本当に運がよかった」

AERA 2012年10月8日号