1本5000円なのにバカ売れ!?「レンコン」農家のサクセスストーリー 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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1本5000円なのにバカ売れ!?「レンコン」農家のサクセスストーリー

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 1本5000円という超高級品ながら、生産が追い付かないほどの大人気。銀座、神楽坂、赤坂から、ニューヨーク、パリ、ドイツにいたるまで、国内外の超高級料理店の数々でも食材として使われ、2018年にはなんと約1億円もの売り上げを計上。そんな驚くべき、茨城県産の"レンコン"があるのをご存知でしょうか?
 この"1本5000円のレンコン"を構想し、見事ビジネスとして成功を収めたのが、民俗学の研究者であると同時に、レンコン生産農業に従事する野口憲一さん。野口さんによる本書『1本5000円のレンコンがバカ売れする理由』では、レンコン農家に生まれた野口さんが、大学・大学院で学んだ民俗学や社会学の考え方を駆使しながら、現在の"バカ売れ"状態を成し遂げるにいたるまでの、レンコンを巡る紆余曲折の道のりが記されています。
 1本5000円という高価格でありながら、なぜこれほどまでに大人気となったのか――。本書では、レンコン農家の抱える問題を前に、物の売れる理由を考え、それを愚直に追求していった野口さんの地道な努力が綴られています。
 いまではどこのスーパーでも一年中見かけるレンコンですが、かつてレンコンは高級野菜の代名詞でした。しかし1970年にはじまった減反政策によって米の作付けが制限されると、それまで米を生産していた多くの稲作農家が、わずか20年間に一挙にレンコン生産農業へと舵を切ったため、レンコン生産面積が飛躍的に拡大。次第にレンコンは高級野菜から大衆化の道を辿っていったのだといいます。
 しかし大衆化は、レンコン農家に苦難をもたらしました。供給量が需要を圧倒的に超えることにより商品価値は低下し、価格が暴落。収入を維持するため、耐病性に優れ、収穫量の多い品種を開発したことも、ますます大衆化に拍車をかけ、もはや他の生産地に台風が来て収穫ができなくなることを願うしかないという、仕事に対する矜持をも失ってしまう悪循環に陥ってしまったのです。
「農家が仕事に対するやり甲斐と矜持を取り戻し、利益も確保できるようにするにはどうしたらいいのか。民俗学者として、レンコン生産農家として、僕はそのような問題意識に苛まれていました」(本書より)
 こうした状況を前に野口さんは、レンコンに"原価と製造コスト以外の何らかの価値"を付与し、レンコンをブランド化するべく格闘を開始。民俗学の知識を生かしながら、"伝統の創造"にひとつの可能性を見出します。恵方巻きや七草粥といった"伝統"が、ときに商業的な理由によって新たに創られてきたように、意図的に伝統を創ろうと考えたのです。
 そこで曾祖父の代である大正年間には既にレンコンを生産していたことに着目し、"大正15年創業"という老舗感を押し出すことに。そのひとつとして、5000円という値段に見合い、なおかつ"大正15年創業"のイメージを具現化した"和モダン"をテーマとする、高級感溢れる豪華なオリジナル箱を作製します。
 しかし、そんな自信作も、はじめはまったく売れなかったといいます。それでも野口さんは諦めませんでした。ここから本書では、コストばかりが嵩んで家族にも反対される苦境のなかでも、独自の営業を続け、人脈を徐々に築き、1本5000円のレンコンが次第に世に出回っていく様子が描かれていきますが、そのマーケティングやブランディングはもちろん、特筆すべきは、野口さんがバカ売れの最たる要因を"両親や先祖から引き継いだ信念や感性、そして身体性"に見出していること。それにより本書は、単なるマーケティングやブランディング論に留まらない、レンコン農家としての矜持も強く心に響いてくる一冊となっています。


(記事提供:BOOK STAND)

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