危険地帯ジャーナリストが取材で出会った「悪いやつら」 その思想とは 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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危険地帯ジャーナリストが取材で出会った「悪いやつら」 その思想とは

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 殺人犯、殺し屋、ギャング、麻薬の売人、薬物依存者、悪徳警官......世の中にはさまざまな国籍や職業の「悪いやつら」が存在しますが、彼らの頭の中はいったいどのようになっているのでしょうか。
 その根幹にあると思われる行動や考え方を体系化したものが、『世界の危険思想』です。著者はTBS系の人気番組『クレイジージャーニー』で危険地帯ジャーナリストとして出演中の丸山ゴンザレス氏。ふだんの生活の中で私たちが生死にかかわるほどの強烈な悪意に遭遇することはそうそうありませんが、本書では著者が数々の取材を通して出会ったエピソードや事例を通して、世界の危険思想の一端にふれることができます。
 まず最初に出てくるのが「人殺し」。殺人は人類最大のタブーのひとつともいえますが、どういった動機や理由でもって殺人を犯すのか、加害者側の考え方が紹介されています。
著者がジャマイカの首都・キングストンのスラム街でインタビューしたのは、現役の職業・殺し屋。その日の暮らしに困るほどの貧乏人であるため、「彼にとって殺すことに罪悪感はあるだろうが、それ以上に生きることに必死なんだと思う」と著者は推察します。そして、インタビューの途中でちょうどかかってきた殺人依頼の電話の会話を聞き、気軽に殺人を頼むコネと金を持つ依頼主のほうにも恐怖感を抱く著者。結果的に、依頼者と実行者という二つの存在が噛み合ったときに殺人が発生することがわかったといいます。
 こうした殺人の仕組みとともに、もうひとつ重要なものが「動機」。人を殺す動機の大きなものは「金」だといいます。多額の保険金や財産など金への執着が優先してしまうと、殺人のほうは完全に人任せにしたりできてしまう。また、取り調べや調書をとるのが面倒なために警察が犯罪集団を殺すというようなケースも。世界を見渡せば、命の価値や正義よりも自分のメリットを優先するという思想がいくらでもあることがわかります。
 このように、殺人だけでなくほかにも売春や麻薬、裏社会などさまざまな視点から世界の危険思想をひも解いていく本書。著者は人類の持つ感情の中で最悪に恐ろしい危険思想を「相手を『甘い』と思って『ナメる』こと」だと結論づけています。相手への敬意のなさが原因でもたらされるものがほとんどではあるものの、あくまで一人の脳内で起きていることのため対処する方法は非常に難しいといいます。
 そのうえで、「みんながもっと曖昧に生きるのがいいのではないか」と投げかける筆者。昨今の日本には、どんな微罪でも決して許さない風潮や、一度でもしくじったら復帰できないような空気感がありますが、もう少しでよいので曖昧なままの状況を許す心が必要ではないかと続けます。すべてのことに白黒つけたがるというのは、必要悪を許容しないとか曖昧さを排除する方向につながり、世界でいちばん危ない考え方につながりかねないという考え方にはうなずける人も多いのではないでしょうか。世界の事例を見ながらどこか他人ごとのように考えてしまいがちですが、実は平和で安全な日本で暮らす私たちの頭の中にも危険思想の芽はあるのかもしれません。


(記事提供:BOOK STAND)

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